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第2話

🐬
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2026/04/02 12:49 更新
鏡の中の彼は、光の粒を撒き散らしているみたいだった。
激しい音楽が止まった瞬間、スタジオには心臓の鼓動だけが響く。
ソウタくんは、汗で張り付いた前髪を乱暴にかき上げ、荒い息を吐きながら床に座り込んだ。
そうた
そうた
みてたの?笑
(なまえ)
あなた
見てた。はい水
おつかれさま
そうた
そうた
ん、ありがと
(なまえ)
あなた
もう朝の3時。そろそろ帰ったら?
もう私たち以外ここにいないよ
そうた
そうた
もー3時か。1番自分が透けて見える時間じゃん
(なまえ)
あなた
透けて見えるって?
そうた
そうた
踊れば踊るほど自分が削れていく気がするんだよね。いつか何も残らず消えちゃうんじゃないかってさ

彼は独り言のように呟いて、鏡を見つめる。
その瞳は、ステージで見せる太陽のような輝きとは正反対の、深い夜の海のような色をしていた。

冗談めかした口調なのに、声の端々には隠しきれない脆さが滲んでいた。
(なまえ)
あなた
それってそうた自身が消えるんじゃなくて
本物の自分がってことだよね?
(なまえ)
あなた
考えとか雰囲気とか自分が思っているように動けなくやっちゃうってことでしょ?
そうた
そうた
うん。
(なまえ)
あなた
消えないし消させないよ
そうた
そうた
たまにはいいこと言うじゃん。
けどさ記憶は曖昧だよ
そうた
そうた
明日になれば俺が積み重ねてきた努力なんて忘れられる。みんな完成してBE:FRISTのSOTAしかみない。

ソウタくんは、ふっと自嘲気味に笑った
(なまえ)
あなた
そーた。そーたはアーティストである前に1人の人間だよ
(なまえ)
あなた
どんだけ辛くても1人くらいは今までのそうたを見てくれてる人はいる。そしてもうそーたは誰かの星になれてる。休むのも立派なトレーニングだよ
そうた
そうた
そーだよな。ごめん俺
パンパンに突っ張った糸が切れたように泣き出すそうた
そうたの横に座り抱きしめるあなたの下の名前。
(なまえ)
あなた
疲れたね。頑張ったじゃん
(なまえ)
あなた
そーた。こあくんのFRIENDSの歌詞にもある通り「雨が降るから虹がかかる」じゃん。今泣いたそうたはまた美しくなって素のそうたを世の中にだせるようになるからね。
そうた
そうた
あなたの下の名前。ありがとう
といいながら微笑むあなた。
(なまえ)
あなた
涙はおさまった?
そうた
そうた
うん。
(なまえ)
あなた
べすてぃーの事考えるのも大事だけど、自分を大切にね?
そうた
そうた
ありがとうあなたの下の名前。俺さちょっと頑張りすぎてたのかも。もっかい見つめ直すわ
(なまえ)
あなた
考えすぎちゃダメだから
そうた
そうた
おう
(なまえ)
あなた
あと早いうちに帰ってたっくさん休むんだよ
そうた
そうた
おう!あなたの下の名前もな
(なまえ)
あなた
ふふ、おやすみそーた
そうた
そうた
おやすみありがとうあなたの下の名前
部屋の窓から入る街灯のオレンジ色の光に照らされながら帰る準備を始めるそうたの背中を見ながら思う。

   当たり前なんて一つもないし
          記憶の中の全てが大事

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