第97話

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2026/05/06 01:45 更新














時間は、静かに、でも確実に流れていった。

痙攣が続く日もあれば、
何事もなかったかのように静かな日もあった。

その繰り返しの中で、

スングァンの体は、少しずつ回復していった。

折れていた骨は繋がり、
裂けた傷も、時間とともに塞がっていく。

完全じゃない。

でも、“生きている体”には戻ってきていた。

———

気づけば、1年半。

ICUを出て、個室へ移ることになった。

機械の数も減り、
ガラス越しではなく、同じ空間にいられるようになった。

それでも——

目は、開かないまま。

———

そして、さらに時間は流れ。

救急搬送されてから、約2年半。

変わらない日常。

スンチョルは、今日も仕事終わりに病院へ来ていた。

「……来たぞ」

いつもの声。

返事はない。

それでも、もう慣れている。

濡れたタオルで、腕を拭く。

「……少しあったかいな」

ぽつりと呟く。

昔より、ちゃんと体温を感じる。

それだけでも、変化だった。

次に、ゆっくりと筋肉をほぐしていく。

固まらないように。

少しでも、戻った時に動けるように。

「……文句言えよ、そろそろ」

かすかに笑う。

「勝手に触るなって」

静かな空間。

機械の音だけが、一定のリズムで鳴っている。

全部終わって、タオルを片付ける。

「……じゃあ、帰る」

いつものように、そう言って立ち上がる。

その時——

ぴくっ

「……?」

一瞬、動きが止まる。

視線が、スングァンの手へ向く。

指先。

ほんのわずかに、動いた。

「……おい」

息が詰まる。

見間違いじゃないかと、もう一度見る。

ぴくり。

また、動く。

「……スングァン」

声が震える。

すぐにベッドに近づく。

「スングァン、聞こえるか」

返事はない。

でも——

まぶたが、微かに震える。

「……っ」

心臓の音がうるさい。

「……スングァン!」

思わず声が強くなる。

その瞬間。

まぶたが、ゆっくりと動く。

ぴくり、と。

そして——

ほんの少しずつ、開いていく。

光を嫌うように、細く。

ぼんやりとした視線。

焦点が合っていない目。

でも、確かに——

「……っ……」

スンチョルの声が出ない。

2年半。

ずっと待っていた、その瞬間。

スングァンの目が、開いた。

「……スングァン……」

やっと出た声は、かすれていた。

スングァンの視線が、ゆっくりと動く。

どこを見ているのか分からない。

でも、確かに意識がある。

「……俺だ」

震える声。

「……スンチョルだ」

少しでも伝わるように、ゆっくりと。

スングァンの目が、ほんの少しだけ動く。

その方向に——スンチョルがいる。

「……分かるか……?」

答えはない。

でも——

その目から、静かに涙がこぼれた。

「……っ」

スンチョルの息が止まる。

それが、反応だった。

ちゃんと、“ここにいる”証。

「……戻ってきた……」

小さく呟く。

震える手で、そっとその手を握る。

今度は——

わずかに、力が返ってきた気がした。

















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