『毎日泣く子』
『あらやだこんなことで泣くの?』
『泣いてばっかりで、弱そうな子』
『毎日泣いているせいで顔が荒れてるんですって』
いいよ
そんなこと
アンタ達のことじゃないし
初めて合う人は「可愛い子ね」なんてお世辞言うけど、心のなかではどうせそんな事思ってもないくせに
善人ぶって
何もしていない私を加害者扱いする
生きる理由が欲しかった
こんな散々な人生でも
たった一つでいいから
生きがいを感じてみたい
どうせそんなこと叶わないんだろうな
私は悪夢から目を覚ます。
ああ、周りの大人たちは私を嫌がる。
理由は単純。うちのこに近づかれたら迷惑だとか、外見が酷いだとか。結局どこに行っても私の味方は居ない。嫌だなぁ。
昨日、エピテラボに行ったからインクから聞いた私が消えるという話が本当かどうか確かめたかった。まあ失敗に終わったけど。
突然声がする。居たのか…!?気づかなかった。
なんで彼はこんなに優しいのだろうか。こんな私と一緒に居たら病気が移るかもしれない。穢らわしい、こんな私が。
『学校』その言葉を聞いて私は怯え、過呼吸になるやだ、やだやだやだやだやだ
私は泣きそうな声で言う。学校なんか行って何になるんだ。また同じことの繰り返し?
結局、君もそういう事を言うんだね。
君は私の前世も、学校で何をされたのかも知らない。だからそんな事が言えるんだ。
エピックの目に輝きが灯る。多分そういう系の漫画とかアニメ観まくってるんだろうな。
エピックはその言葉に反応する。これは、話しても良いのだろうか?学校に行きたくないという事の言い訳になってしまうだろうか?
今度はエピックが黙り込む番だった。エピックは私が話しやすいように何も言わない。
私は目を伏せる。
エピックは私の肩を掴んで優しく微笑む。
大切?私が、?
嬉しい、誰かの生きがいになれていることが。
こんな私でも人を幸せにすることは出来るのだろうか。
その言葉は、優しく、私の心に空いた穴を埋めてゆく。なんだか、久しぶりに満たされた気持ちになった。
私はエピックに泣きつく。ありがとう、ありがとう
このまま、すべてが止まってしまえばいいのに…
こんなことをしていると、私が消えるなんて事が嘘みたいに思えた。
今思えば、インクの虚言なのかもしれない。私をからかっていただけなのかもしれない。
彼に本当のことを話したのは、良かったのだろうか?
結局、私がPlayerだってこともバレたし。
それでもエピックは私を見捨てないでくれた。
今更幸せをあげるなんて言わないでよ?神様
私は温かな陽射し差す部屋の隅で、優しく笑う。
それでも良いかもしれない。今更でも、変われるのなら。遅くたって、違ったって良い。それでも、私を愛してくれる人がいるから。
私は、私を抱き寄せているエピックに感謝する。理由なんかどうだって良い。
エピックは優しく微笑み、私の頬を撫でる。
その瞬間私のソウルをくすぐったいものが駆け巡る。
ああそうか。私はエピックの事が『好き』なんだ。
推しとしてじゃなく、大切な人として。
いつか、この気持ちを伝えられるだろうか。
その時には、春の木の下で、『本当の気持ち』を伝える事ができますように。
開け放たれた窓から夏の風が入ってくる。
街に広がる緑は平凡なこの世界を照らしていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。