iw side
スマホのアラームの音で目を覚ます。
布団をひっぺがすと寒そうに震える。
無理やり体を起こさせると目が半開きで寝そうになってる。
しばらく揺すっているうちにだんだん焦点が合ってきた。
簡単にパンにジャムを塗ったものを胃袋に放り込むと、身支度を整え始める。
洗濯物は今日は雨が降ってるから部屋干し。
歯磨きもセットも全部終えて後はスーツ着て、ネクタイ締めて。
そこまで終わって後ろを振り向くと、ふっかも仕事モードの顔をしてるんだけど…
手元がめちゃくちゃもたついてる。
しゅるり、とふっかのやりかけのネクタイを外す。
さっと結んでやると満足した様子。
ドアを開けると二人で外へ。
夜だけじゃなくて朝も二人分の足音を聞くことになるとは思わなかった。
ふっかの家に寄ると荷物を予定通り置いてまた会社へ急ぐ。
意外と時間に余裕が無かったせいで、靴の音が忙しなかった。
まだ雨が降らないだけ良かった、と安心した。
いつも通り昼はあのベンチへ行こう、と思ったけど昼は雨が降っていて無理だった。
ぴしょぴしょと雨が音色を奏でて、そこに食堂の人々のノイズが加わると、雨の日の音楽になる。
何だかしっとりと湿った雰囲気に心做しか他の人も静かな気がする。
それぞれ買いに行って決めた席に持ってくる。
ご飯を食べているとふわり、とふっかから俺の家のシャンプーの匂いがしてくる。
ふっかと話しながら不思議な感覚に囚われる。
最近俺何か変だ。
関係性も深まってきているのに変な嘘吐くし、こんな事言ったら引かれるかもってビクビクする自分が居る。
お昼が終わったあとでの休憩室でもまたふっかが俺と同じ香りを漂わせているのを再確認すると、
周りに同じ匂いな事がバレるかもしれないと思う反面バレてくれたらいいのにって意味わかんない事を思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!