あたしは中国を拠点とする
有名通販サイトの箱入り娘だった。
けど、両親は跡取り息子が欲しかった。
あたしは望まれた命じゃなかった。
あたしは男として育てられた。
可愛いものじゃなくてカッコいいものが好き
魔法少女よりもスーパーヒーローが好き
長い髪よりも短い髪のほうが似合う。
暗示のようにかけられていた。
この運命から逃れることはできない
そう諦めていた矢先、事件は起きた。
嬉しかった。
これからは女の子として
生きることができる。
けれど、世間はそれに適応していなかった。
煩い。
あたしはあたしだよ
あたしはあたしだよ
あたしは…もうつかれた。
そして決めたのだ。
あたしは日本に逃げると。
所謂エージェントと言われる黒服にサングラスの
男性たちがあたしを探しているのがわかった。
そして居場所がバレぬようにあたしは
スマホを濁流の川に捨てた。
そしてとあるハコを訪れた。
客席を回る不死鳥、
主の周りを回るネオンと宝石。
たまたま入ったハコでやっていたのは
BAEの幻影ラップだった。
楽しさで圧倒されていた時、
たまたま会場に居たエージェントに見つかった。
一生懸命走った。
スマホがないからここが何処かもわからない。
それでも、あの家には帰りたくない、
だから走った。
あたしの手を引いたのは
さっきまであたしが居たハコで
ライブをしていた、燕財閥の息子の一人、
燕夏準だった。
あの日は雨で、体が冷え切っていたから
お風呂にも入れてくれて、服も買ってくれて。
ただ単に嬉しかったし、幸せだった。
ずっとここに居たかった。
けど、よそ者だから。箱入り娘だから
きっと追い出される。帰れと言われる。
そう思っていたのに…
どうしますか?と聞かれたあたしは
即答でやると答えたのだった。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!