第5話

5話
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2026/03/24 17:57 更新
暖房を付けていたはずなのに、何故か寒気が襲ってくる。




冬だからしょうがないと思えばそれまでだけど、
どうしようも無く不安が湧き出てきた。




虫の知らせ、とでも言うのだろうか。












もしかして、言ちゃんが目を覚ましたのかな。







まあ、そんな事は到底起きないだろう。







兎に角、布団を被り直そうと少し体を起こした瞬間、
僕は異常事態に気付いた。










固く閉ざしていた玄関のドアが開かれ、
そこから懐中電灯の光が差し込んでいるのだ。



ガチャガチャと聞こえる金属の音は、
なんだか不気味に聞こえた。



開かれた扉から冷たい北風が吹き込み、
僕達の暖かい空気を剥ぎ取っている。




ドアの方から話し声が聞き取れたけど、
内容までは聞き取れなかった。




部屋の温度が下がる事に心臓の鼓動は早まり、
僕の呼吸はどんどん浅くなっていく。


さっきまでの眠気は嘘のように消え去り、
心の中には恐怖が芽生え出している。









衝撃のあまり、真っ白になった頭で必死に思考を巡らした。







さっきの音は、鍵が開けられる音だったのか。
警戒していれば、きっと気付けていた。





「家に居れば安全だ」
という考えを持って油断していた自分を悔やんでも、
過ぎた時間は巻き戻らない。





僕は先輩が家に入ってきたのだと思った。

職場でも同じ様に、寝込みを襲われた事があったから。

















寝込みを襲われ、何とか逃げ出した時先輩にこう言われた。




「次は絶対逃がさないよ。
どこへ行っても見つけ出すし、
捕まえるまで一生探し続けるから。」


「それまで待っててね、問くん。」




長い前髪の隙間から見えた先輩の表情は、
ニタニタとした無邪気な笑顔だったけど、
目の奥は金属のように冷えきっていた。





無邪気に笑う人間を見て恐怖を感じたのは、
これが初めてだと思う。





先輩の手には、刃物が握られていた。










職場で嫌という程嗅いでいた、
牛乳に浸した生肉が腐ったみたいな異臭が、
どこからか強烈に香ってくる。






新鮮な空気を求めて口呼吸してみたけど、
全く無意味だった。






そのドブみたいな匂いが、寝る前に撒いた芳香剤と混ざり、
更に耐え難い匂いへと変化しだした。












呼吸することも儘ならない異臭に顔を顰めながら、
僕は静かに覚悟を決めた。







mn
言ちゃん…!!





本当はあまり動かしたく無かったけど、やむを得ない。

君なら解ってくれるはずだ。



















喉にせり上がってくる消化物を何とか抑えながら、
ピクリとも動かない君と一緒にクローゼットへと避難した。


腕の筋肉は限界を迎えて攣りそうだったけど、
言ちゃんの為なら動かせられている。









ここなら、最後の時間を邪魔される事は無いだろう。







mn
ねぇ...言ちゃん










gn
何...?




mn
ずっと前から言いたかったんだけど...




















mn
心中しよう。









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