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第2話

第二話 森の斧
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2026/06/02 23:30 更新
リーフェル村を旅立ってから半日。

ノアは森の中を歩いていた。

頭上では木々が揺れ、小鳥たちの鳴き声が聞こえる。

地図によれば、この森を抜けた先に最初の街があるらしい。
ノア
ノア
「えっと……。」
ノアは地図と周囲を何度も見比べる。

旅なんて初めてだ。

道を間違えていないか不安になる。

誰かに聞こうにも、人がいない。
ノア
ノア
「だ、大丈夫かな……。」
少し弱気になる。

だが来た道を振り返ることはしなかった。

昨日の自分なら引き返していたかもしれない。

それでも今は違う。

怖くても進む。

そう決めたからだ。



しばらく歩いていると、妙な場所に出た。

周囲の木々が不自然に途切れている。

まるで広場のようだった。
ノア
ノア
「こんな場所……地図にあったかな?」
ノアは首を傾げる。

その時だった。

キラリ。

何かが光った。
ノア
ノア
「……?」
光の方へ近付く。

そこには大きな切り株があった。

そして――

その中心に。

巨大な斧が突き刺さっていた。
ノア
ノア
「お、おお……。」
思わず声が漏れる。

斧は普通の武器ではなかった。

柄は黒く。

刃には銀色の紋様が刻まれている。

長年放置されていたように見えるのに、不思議と錆びていない。

まるで今も誰かを待っているようだった。
ノア
ノア
「すごい……。」
ノアは斧を見上げる。

かなり大きい。

自分の身長に近い。

こんなもの普通は持てないだろう。

ましてや自分のような細身の少年には。
ノア
ノア
「でも……。」
少し気になった。

どうしてここにあるんだろう。

誰の武器なんだろう。

そして。

なぜか目が離せない。

不思議な感覚だった。

胸の奥がざわつく。
ノア
ノア
「ちょっとだけ……。」
誰も見ていないことを確認する。

もし誰かに見られたら恥ずかしい。

そんなことを考える辺りがノアらしかった。



斧の柄を握る。

冷たい。

だが嫌な感じはしない。

むしろ――

懐かしい。

そんな気がした。
ノア
ノア
「え……?」
ノアは首を傾げる。

初めて触ったはずなのに。

まるで昔から知っているような感覚だった。

気のせいだろうか。

そう思いながら力を込める。
ノア
ノア
「せーの……!」
グッ。

抜けない。

やっぱり無理か。

そう思った瞬間。

斧が淡く光った。



ズンッ!!

地面が震えた。
ノア
ノア
「うわっ!?」
驚くノア。

次の瞬間。

巨大な斧があっさり切り株から抜けた。
ノア
ノア
「え?」
軽かった。

あり得ないほど軽かった。

見た目は大人でも扱えないほど大きいのに。

まるで木の枝を持っているみたいだった。
ノア
ノア
「な、なんで……?」
ノアは斧を見つめる。

信じられない。



すると。

体が勝手に動いた。

斧を構える。

足を開く。

重心を落とす。

そして。

ブォンッ!!

空を切る音。
ノア
ノア
「えっ!?」
ノア自身が一番驚いた。

今の動きは何だろう。

考えていない。

なのに自然に体が動いた。

まるで何年も鍛えた戦士のように。



もう一度。

ブォン!!

横薙ぎ。

ブォッ!!

振り上げ。

ズンッ!!

振り下ろし。

地面が揺れる。

近くの木々がざわめいた。
ノア
ノア
「な、なんで……。」
息を切らしながら呟く。

自分は剣術なんて習ったことがない。

斧なんて持ったこともない。

なのに。

握った瞬間から使い方を知っていた。



その時だった。

ガサッ!!

茂みが揺れる。
ノア
ノア
「ひっ!?」
ノアは飛び上がった。

すると現れたのは――

大きな狼だった。

灰色の毛並み。

鋭い牙。

明らかに普通の動物ではない。

魔物だ。
ノア
ノア
「ま、魔物……。」
ノアの顔が青ざめる。

逃げたい。

今すぐ逃げたい。

でも。

狼は道を塞いでいた。



グルルル……

狼が唸る。

足が震える。

怖い。

心臓が暴れる。
ノア
ノア
「僕なんかじゃ……。」
その言葉が出かけた時だった。

手に握った斧が僅かに光る。

そして。

なぜか心の奥から声が聞こえた気がした。
『進め。』
気のせいだったのかもしれない。

でも。

ノアは斧を握り直した。

震える手で…必死に。
ノア
ノア
「怖いけど……。」
狼が飛び掛かる。

ノアは息を吸った。

そして。
ノア
ノア
「逃げない…!」
ブォォンッ!!

巨大な斧が振るわれる。

狼は驚いたように身を引いた。

その隙にノアは後ろへ飛ぶ。

偶然だった。

技でも何でもない。

それでも。

初めて自分の意思で立ち向かった。



森に風が吹く。

狼はしばらくノアを見つめると、やがて森の奥へ消えていった。
ノア
ノア
「はぁ……はぁ……。」
その場に座り込む。

全身が震えていた。

怖かった。

今も怖い。

だけど。

少しだけ嬉しかった。

逃げなかったから。



ノアは膝の上の斧を見る。

斧もまた静かにそこにあった。

まるで最初から持ち主を知っていたかのように。
ノア
ノア
「君はいったい……。」
答える者はいない。

けれど。

ノアは知らなかった。

この斧が、やがて世界の運命を左右する伝説の武器であることを。

そして。

この斧との出会いが、ノア自身の秘密へ繋がっていることを。

森の木々が揺れる。

少年の冒険は、まだ始まったばかりだった。
第三話へ続く。

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