そして3週間前。
岸さんから告白された。
仕事終わりに二人で居酒屋に寄るのは何回目かな。
私も、
ちょっとこれはもしかして脈があるのではないのか???とか
いやいや岸さんはとにかく優しいからな、
優しさが太いで優太さんだからな!!とか
舞い上がる自分を持て余してはいた。
私から誘っても来てくれるのか知りたくて、今日飲みに誘ったのは私だった。
その時の照れたような嬉しそうな顔に、どうにもならないほど好きになってる自分と、怖くて付き合ってる人や好きな人がいるか聞けないで来た自分を再確認した。
今日は、聞いてみよう。
今まで恋愛の話はなぜか出なかった。
入社してすぐの歓迎会で、酔っ払った私は浮気された上にフラれた話を職場の人の前でした上に泣き笑いしてしまったのだ。
岸さんは気を使ってくれてたのかも知れない。
それでも職場の人に生まれた赤ちゃんの話とか、好きな歌手のライブの話とか、学生時代の友達の話とかですぐ時間が過ぎて、岸さんの話してる顔、笑ってる顔を見てると、唐揚げモグモグして、ジョッキぐびぐびして、クーって目つぶるのを見てると、幸せすぎて。
私の前彼の浮気の話が出たあとだった。
真顔で私を見て、そう言った。
まっすぐ私を見てた視線をテーブルに落として、何か耐えるみたいに言った。
そしてため息。
目の前がチカチカした。
恥ずかしいのか緊張なのかを
堪えてるような岸さんの表情がまた、
初めて見る男の人みたい。
グラスをつかんでた私の手を、岸さんの手がつつむ。
わ、暖か……
岸さんのびっくりした顔になぜだか笑ってしまう。
私こそ片思いだと自分に言い聞かせてたのに。
改めて、私の手をにぎり直す。
繋いだ手を愛しそうに見つめてる。
私たちは彼と彼女になった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。