lk side
カランカランッ…
ヒョンジナが暗い顔をして帰ってきた。
俺はヒョンジナが何を言ってきたか知ってる。
上司として、
「知らない」と見逃すわけにはいかない。
自分として、見逃したくない。
数分前。
信じがたかった。
ヒョンジナがこんなことを言うなんて
地上から聞こえてきたこの声に耳を疑った。
ターゲットを安心させるようなその姿に
俺には見せてくれないその姿に
悔しさを覚えた。
あくまでこいつらはターゲットと死神。
俺とヒョンジナは上司と部下
ギリギリを守り抜くほうが難しくて
危険なはずなのに
俺のほうが圧倒的優勢のはずなのに
ヒョンジナはなぜそっちを好む?
わからなくない。
俺だって同じようなことをして
現場から離された。
そのドキドキ感と
一度惚れた人からは離れられないこと
俺が一番わかっているのかもしれない。
ヒョンジナの言葉が詰まり目を逸らした
やっぱり
あの話し声はヒョンジナの声で間違いないのか。
感情が高ぶる。
好きだからこそ、熱くなる。
気の動転が止まらない。
このままじゃ、ヒートアップするばかりだ。
ヒョンジナが、死神をやめる?
聞き間違え?
いや違う。
つい先日まであんなに冷酷で淡々としていた君が
今では俺に哀愁な微笑みを向けてきている。
なんで…?どうして…?
俺は、どこで教え方を間違えた。
どこで俺と同じような道に進ませてしまった。
どこで愛を伝えるタイミングを逃してしまった?
気持ちにふさわしい者?
生きていきたい……?
ヒョンジナ…
声が震えた。
まさか、とは思った。
こいつだけはないだろうと
勝手に思っていた。
死神はターゲットに近づくため、人間になることができる。
だが、一度冥界に戻ってきて、姿を戻す必要がある
しかし、永遠に人間になることもできる。
だが、もう冥界に一生戻ってこれないし
人間との関わりの記憶は残るが
冥界での記憶が全て消えてしまう。
人間になると言う選択は
冥界での禁忌を犯した時の罰としてか
自ら選ぶか。
だからこそ、ヒョンジナだけはありえないと
信じていた。
引きつった顔で笑ってしまう。
馬鹿な馬鹿な馬鹿な。
ヒョンジナが人間になるなんて
そんなはずがない
信じたくない
頭が真っ白になる
なんで?
なんでヒョンジナが?
人間になるだなんてこの世界においては絶対禁忌。
冥界内から消されるのと同様で
ましてや自分からその道を選ぶなど、馬鹿だ。
自分から選んだ時は誰かを巻き添えにしないと
自分に代償が食らう。
視覚、聴覚、味覚、感覚など、、、何かを失う。
この世界から「死ぬ」のと同じだ。
絶対に……そんなこと…
ヒョンジナに………
近くにおいてある自分の武器を手に取る。
久々に持った。
3年ぶりぐらいだろうか。
ジャリン……………
気づけば俺は
鎌をヒョンジナの首すぐ近くまで降ろしていた。
ヒョンジナの足がブレて地面に腰がついている。
俺はさらに鎌をヒョンジナの首元に近づけた。
少しでも手がブレたら
ヒョンジナの首は切れてしまう。
俺の長年の技術に懸けて
無計画でそれが起こることはない
ヒョンジナの顔も引きつっている
こんな姿初めて見せたかもしれない。
ザシュッ……
ヒョンジナの首に切り傷が入る。
だが、人間ではなく死神。
血も出ないし、痛みも残らない。
切られた感覚だけだ。
わかっていて、言った?
どこでそんな人間心、拾ってきたんだか。
俺がそうだったから。
確か俺は、こう言われた時に諦めたんだっけな。
俺は少し鎌をヒョンジナの首から離した。
俺は鎌を上げて定位置に戻した。
俺はヒョンジナに背を向けて部屋を出た。
カランカランッ…














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。