-スバルside-
「おーい、ちょっといいか?」
「あ、はい!すぐ行きます!」
「ふふふ、ありがとうねえ。ちょうどお裁縫ができる人を探してたのよお。」
「いえいえ!これくらいお安い御用ですって!」
「スバ兄ぃ!追いかけっこしよー!」
「おー!分かった、分かったっての!」
異世界に召喚されて一週間、俺は約束した日々の手伝いをこなしながらも何事もなく暮らしていた。
手伝いの中でもよくあるのが、集落の人達からの頼み事だ。
頼み事の量…これはきっと、この集落の人数の少なさにある。
異世界モノのお約束だと、エルフとか亜人系は寿命が長いかわりに数が少ないというハンデを背負っている…
というのが多々ある。
恐らく、この世界もそう。
なので、人手が足りないこの場所で、俺のこの多方面の器用さが活かされているというわけで…
「うーん、役立ててると喜んでいいのか複雑な気持ち…」
「どうしたんだい?そんな難しそうな顔して。」
「あ、アーチ…」
今俺に話しかけてきたのは、俺とエミリアの兄貴分でもあるアーチ。
あのあとばったり会って、フォルトナとエミリアの紹介を受けた。
…そういえばめっちゃフォルトナさんにイジられてたな…
というのは置いといて、この人めっちゃ頼りになるんだよ…さすが兄貴分…!
だから、今も声をかけてくれたんだろうけど___
「…それで、何かあったの?」
「んにゃ、別に!
…あー、折角声掛けてくれたとこ悪いけど、早くエミリアんとこ行かなきゃ怒られちまうから…またな!」
「あぁ…ふふ、エミリアは確かに怒りそう。またね!」
と、名残惜しくも送り出してくれた。
一際大きい木、その根元にある小さな小部屋のことを『お姫様部屋』という。
その中にいるのは、見た目も性格もまさしくお姫様なエミリアだ。いや天使だわ。
さてと、エミリアは何をしてるかなっと。
「エミリアー?起きてるか?」
返事がない。…もしや、寝てる?
その可能性はある。
とりあえず、音を立てたら悪いし、ゆっくり、慎重に扉を開けて…
「あれ!?エミリアぁ!?」
エミリアが、いない。
「まさか…」
また抜け出した!?
あちゃー、探すのも捕まえるのも大変だぞこれ…
けど、お守り係は俺だし…
これからは離れちゃ駄目だと、俺はエミリアを探しに走り出した。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。