【おらふくんside】
冷たい夜風に身震いをする。
おんりーが攫われた。
これだけは覆り用のない事実だ。
でも……
やっと、裏切り者が姿を現したかもしれない。
手がかりを掴むなら、今しかないよね。
おんりーを助けるためにも…裏切り者を見つけないと。
なんか……わかりそうな気がするんやけど…
銃声…
……銃を使って侵入したなら、マイクをミュートにするまでが速すぎるよね。
ってことは…
あの前から裏切り者は家の中にいた?
そういえば、少し前からおんりーは黙ってたよね。
その間に、何かが……?
開いていたドア。
裏切り者の侵入経路。
硝煙の残らない室内。
微風が頬を撫でる。
……っ、もしかして!
僕は窓際の方へ歩く。
部屋の奥には身長よりも大きな窓がある。
カーテンが閉まっているので、今まで特に目に入らなかった。
僕は思い切ってカーテンを開けてみる。
窓は若干開いていた。
硝煙の匂いがしなかった理由はこれだ。
換気がされていた。
多分、銃が使われた証拠をなくすためだろう。
そして。
窓に空く小さな円形の穴。
ここから指を入れると、ちょうど鍵を開けられる。
よくある家宅侵入の手口だ。
これなら、大した音を立てずに、慣れている者なら
ほぼ無音で室内に侵入することが出来ただろう。
僕は今度は反対側、玄関の方へ向かう。
鍵を見る。
そこは、何かに穿たれたかのような穴があった。
そう前置きしてから、僕は思い当たる可能性を話す。
恐らく、鍵を壊したのは…
おんりー、だと思う。
裏切り者からしたら、ここの鍵を壊すメリットなんてないもん。
僕らが…警察とかの、部外者が入れるようになっちゃうから。
きっと、おんりーは僕らがここを調べにきて…
いつか、助けに来てくれるって信じてくれたんだ。
この後も、何か手掛かりになることを探したが、何も見つからなかった。
おんりー……
裏切り者なんて、何をしてくるかわからない。
絶対、助けないと……っ
【???side】
ショッピングモールを人々のざわめきが満たす。
今日って…
そっか、確か日曜日だっけ。
道理で人が多いんだね。
甲高い悲鳴が喧騒を引き裂いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!