僕たちが二人きりになった時、
時計はもう夜の9時を示していた
まあ、ほんとはちょっと寂しかったけどね
そんな気持ちがあなたにバレないように
僕は話題を変え、
あの時ミアさんはなんと言っていたのか聞いてみた
勘違いでも、
あなたの彼氏だと思ってもらえたことが嬉しくて
少しにやけてしまう
あなたにバレてしまわないように
口元を手で隠した
だけど、あなたはなんとも思ってないみたい
僕にはまだ興味を持ってないみたいだ
少し悲しいけど、
まだ出会ったばかりだからしょうがない
僕が頭の中で一喜一憂していると
あなたがそんな質問を投げかけてきた
ああ、そっか昨日あなたの目の前で
ジンヒョンから電話がかかってきて
電話越しにめっちゃくちゃキレられたんだった
今思い返すとちょっと恥ずかしかった
しかもその後無理やりあなたと連絡先交換しちゃったし…
はぁ、ほんと何してんだろ
昨日の失態を思い返し、
一人ため息をついていると
と、あなたは僕に
申し訳無さそうな視線を向けた
そう言ってあなたは僕に優しく微笑んだ
あなたに気にかけてもらってばかりの自分に
不甲斐なさを感じた
こんな僕でも
あなたがいつか
好きになってくれる日が来るのかな
そんな僕の儚い願いは
甘くて、
少しほろ苦い
カクテルの匂いに包まれて
僕とあなた二人だけの空間に
シュワシュワ溶けて消えていった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!