第2話

🌺奨の場合 ②
360
2024/04/26 10:22

* あなたの下の名前 side *




私が初めて先輩に出会ったのは、入学して1週間くらいたった頃。

まだ校舎の作りが把握できてなくて、移動教室先の場所がわからず迷子になった。
高校生ともなると、先生達のフォローも特になく、自分でやるしかない。

あなた
不親切な学校…。
何故かほとんど人がいない渡り廊下に出てしまい、困りながら歩いていると、ちょっとチャラそうなグループが座って話し込んでいた。

せっかくだから場所を聞こうと声をかけた。
あなた
すみませーん。
視聴覚室ってどこですか?
生徒
視聴覚室?
生徒
……1年生?
可愛いじゃんw
ニヤニヤとし始めた彼らを見て、うわっ失敗したな。と思ったけどもう遅い。

とうしようか、と少し震える足を見られないように後ずさる。

あっという間に囲まれてしまい、1番チャラそうな男子に肩を組まれた。
生徒
いいよぉ、俺らが連れてったげる。
絶対違うところだよね…。
どうしよう…どうしようっ!?
そこ、何してんのー?
後ろから軽くて優しい声が聞こえた。

振り向けば、私を囲んでいる人たちよりも一回りガタイの大きい人が、穏やかに微笑みながらのんびり歩いてきていた。


授業始まるよー?
はいはい、行った行った。
チャラグループをしっしっと手で追いやると、彼らは、仕方ねぇな…と苦笑いで戻っていった。

君は1年生?
あなた
…あ、はい!
ここの渡り廊下は、あいつらの専用みたいになっちゃってるから、特に1人ならあんまり通らないように覚えておいた方がいいね。
あなた
はい…。
どこに行くの?
俺で良かったら案内するよ。
あなた
…いいんですか?
さっきの今で怖くなければだけどw
そう言えば、なぜかこの人は怖くない。
声が優しいからかな。
包み込むような温かい雰囲気に安心感しかなかった。

ほっとしたら、足の力が抜けた。ついでに腰も抜けた。

わっ!どうした?
大丈夫?
あなた
だ、大丈夫です〜!!
大丈夫だって叫びながら泣いてしまった私に笑いながらも、私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。
その後、立てなくなってしまった私を軽々とお姫様抱っこで保健室まで連れてってくれた先輩に恋してしまうのは、女の子なら避けられない当然の流れで。

とんでもなくスマートで、とんでもなく優しくて、とんでもなくカッコよかった。

それから、会いたくて探しては挨拶をして、偶然見かけた時にもその度に挨拶をして、生徒会長になって忙しくなった先輩の邪魔にならない程度に追っかけては挨拶をして、を繰り返してるうちになんとか覚えてもらえたみたい。


もうそれだけで本当に幸せ。

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