今は仁と街に来ている。普通に探偵二人がいつもの格好で歩いてたら人だかりができてもおかしくないため、いつものパジャマとは違う服を来ている。仁とのデートのために健三に選んでもらった服…だったらメイド服とかチャイナドレスしか勧めてこなかったから、仁がくれた服を着た。仁も僕が選んだ服を着てくれている。
いつもみたいにそっけないけど、仁は本当に思ってる事しか言わない。だからこれは本当に似合ってると言ってくれたんだ。それが僕は嬉しくてついついニヤけてしまう。
今はまどかと街にきている。探偵が二人で歩いていては人だかりができてもおかしくない…というかまどかがいる時点で人だかりができてもおかしくない。だから、まどかはいつものパジャマ風の服ではなく、俺が贈った服を着てくれていた。かくいう俺もまどかがくれた服を着ているのだが。
まどかが顔を少し赤らめながら聞いてくる。めちゃくちゃ似合ってる!!っていいたかったけど、恥ずかしすぎてそっけなく言ってしまった。
俺のそっけない言葉でも喜んでくれるまどかが本当に可愛くて仕方がない。本当に嬉しかったようでずっとニコニコしている。
そう思った。そうすればいつまでもまどかと居られるし、まどかもこの世の醜さをこれ以上知らなくていい。俺も大切な人達がこれ以上傷つけられるのは見たくない。
そんな考えもこの笑顔を見たら吹き飛んでしまう。今はこの短い時間を大切にしよう…。そう思った矢先、あんなことが起きるなんて…
1時間後
お昼はまどかの好物の鹹豆漿が美味しい店に入った。台湾料理界では有名な店らしく、事前に調べて予約していたからスムーズに入ることができた。
そして、もう一度まどかと街を歩こうと手を伸ばしながら後ろを振り向いた時、まどかはカバンをゴソゴソとしていた。なにか探しているのだろうか。
やはりなにか探していたようだ。まどかが戻りたいほど大切な物なのか?それなら戻るしかないな!まどかのためなら全然だ!
道中
まどかと手を繋ぎながら人通りの少ない道を歩く。すると、後ろから自転車が来た。まどかが道路側にいたため、まどかを自分の方に寄せる。
ギュッ…
しかし運の悪いことに自転車が通ったところは水溜り。その水飛沫にまどかは当たってしまった。そのせいで服は汚れてしまった。
まどかは俺があげた服が汚れたことが悲しいらしい。服なんかいくらでもあげるのに。でも、確かに俺もまどかがくれた物が汚れたり壊れたりしたら腹が立つし悲しくもなる。
俺は泣いてしまったまどかを背負いながらスワロウテイルの事務所に戻った。まどかは泣きつかれたのか俺の背中で眠っていたが、事務所に着く直前に目を覚ました。
寝たら悲しみは少しマシになったのか、さっきより声色が明るく感じる。俺の背中から降りたまどかは、『少し待ってて』といい、事務所に入るが、まだ寝ぼけているのかピコピコと音を出しそうな歩き方だった。
その姿を見て、かわいいという本音が出てきた。まどかに直接言えたらいいのに。
ほどなくしてまどかは出てきた。さっきの汚れてしまった服は着替えてきたようで、いつものパジャマ風の服に布団のような灰色の大きな羽織りを着ていた。そして、手にはなにか紙袋を持っていた。
そう言ってニコニコしながら紙袋を渡してくるまどか。開けてと言わんばかりにキラキラとした瞳で見つめてくるまどかに負けて紙袋を開ける。中に入っていたのは…
まどかはそういうといそいそと俺の持っているネックレスをとり、俺の懐に入れた。
そう言いながらおれは懐に手を添える。左胸にあるネックレス。これが俺のお守り…そう思っていると、まどかが俺の顎をクイッと下げた。
そう言うまどかは酷く綺麗だった。時折見せる酷く綺麗な姿。俺はそれが好きだった。
もう一度街に戻ってまどかと街をぶらついていると、まどかと俺の端末に連絡が入ってきた。緊急の事件依頼らしく、麻薬の取引が起こるらしい。そこでたまたま近くにいた俺たちに依頼が来たということだ。
俺もまどかもせっかくの恋人といられる休日なのにと不機嫌だったが、探偵としてそれは見過ごすことができないと、仕事モードに切り替えることにした。
ついたのは街の郊外にある臨海部の廃工場。見たところ外の見張りがざっと5人。中に何人いるのかはわからないが、黒塗りの車が2台。もう中で取引が行われているのか…!?
いつもは働きたがらないまどかが珍しくやる気をだしている。それはいいことだが、今回ばかりは危ないから離れていてほしい。
こういうときのまどかは頑固だ。頑なに意思を曲げようとはしない。だから俺から離れないという条件付きで一緒に中に介入することにした。…この時の判断が甘かったことをすぐ後に知ることになる。
外の見張りを片付け、黒塗りの車の中に人がいないことを確認し、廃工場の中に入った。入るとすぐにまどかが記憶に潜った。潜りながら取引がどこで行われていそうか見渡しているようだ。その目はいつものアイスグレーの目ではなく、俺の普段のより濃い血のような紅い目をしていた。
潜りすぎたら体調にでてきてしまうため、体調不良をなかなか言い出さないまどかの確認を怠らないように気をつけている。
奥に音を立てないように気をつけながら駆け足で行く。まどかも俺の後を追うように頑張って走っている。すると、奥の方から声が聞こえてきた。
俺達が到着した時にはもう既に取引は開始されていた。俺はどうやってこいつらを捕まえるか考えていると、足元にあった石を蹴飛ばしてしまった。
その音に気づいた奴らは俺の存在を完全に感じ取ったらしい。まどかのためにも、こいつらを捕まえるためにも俺は出るしかないようだ。まどかはまた記憶に潜っているのか、目を閉じて頭に軽く手を置いたまま動かない。その姿に少し安心して、ヤツらの前にでた。
1人はネストの探偵と聞いて顔を青ざめさせたが、もう1人はネストと聞いてキレているようだ。
そして、顔を青ざめている方に近づき、傍にあった縄で縛る。もう一方を格闘術で気絶させてから縛ろうかと後ろを振り向いた直後、腹に大きな衝撃が起きた。
ドンッ!!…
不意打ちでやられたことに俺は少し腹が立ってしまった。すぐに立ち上がって術を出そうとしたそのとき、まどかが壁の向こうから出てきた。
やはり食いつくか!まどかを見たら多分コイツは食いつくと思っていたんだ!!やはりでてこないように約束していればよかった!!まどかに近づこうとするヤツにさらに腹が立ってきた。俺はすぐさまヤツに近づき、その怒りをヤツにぶつけた。
ドサッ!!!……
俺の右ストレートを完璧に顔に決められたヤツは床で這いつくばって動けなくなっていた。その姿を見て奴はもう戦闘不能だろうと縄で縛る。後は警察を待つだけだった。まどかに怪我はないか聞こうと後ろを振り向いた。その時、上から二人、誰か降りてきた。
狙いは…まどかだった!俺は目の前の奴を一人蹴散らそうと術を仕掛けるが、焦っていたせいで奴を気絶させることはできなかった。しかし、倒れてくれたおかげで、まどかの元に向かったもう一人の方をとっちめることができた。
ドサッ
ドゴォッッッ!!
ドンッ…
仁が急に上から降りてきた奴らをとっちめてくれた。さっき記憶で確認したけど、コイツラヤクザで間違いなさそうだ。そのとき、まだ気絶していなかったヤクザがなにか取り出そうと懐に手を入れているのが見えた。
カチャッ…
コイツが持っていたのは刀(短刀)だった。ヤクザなら持っているかもしれないが、完全に銃刀法違反だ。それより、コイツは仁を狙っている…!!仁に向かって刃を向けているのだから完全にそうだ。そのときだった。奴は仁に向かって突進していった。
ギラッ…
僕は無我夢中で仁の前に立った。そして、次の瞬間、僕の腹には衝撃が走った。血を吐きながら。
グサッ!!
ドサッ…!!
俺は一瞬、何が起こったのかわからなかった。急にまどかが焦った顔をでおれの後ろに立つんだ。そうしたら次の瞬間、まどかは俺が仕留め損ねた奴に腹を刺されていて、血を吐いて倒れた。
俺はコイツがやったのだと理解した。理解すると行動は速く、いつの間にかまどかを刺した奴を縄で縛っていた。
ドゴォン!!!!
ドサッ!!
俺は縄でソイツを縛り上げ、天井からぶら下げた。それが終わると、直ぐ様まどかの元に向かい、応急処置を始めた。
まどかはまだ意識はあるようで、ときどき血を吐きながら俺の名前を呼んだ。血は腹を抑えてはいるがまだ止まらない。もう十分すぎるくらい血を流したはず…!!
自分が一番危ない状況にいるのになぜこんなに人の心配をするのか。いまだに血は止まらないし、警察もまだ来ない。他の記録者たちも来ないし…なにやってるんだよ!!
今から死ぬみたいな事を言うまどか。まどかが死ぬ?そんなことがあっていいものか。絶対だめだ!!生きろ!!
まどかはもう意識を失っていた。人間は身体の血の30%を無くしてしまうと死に至る可能性がある。まどかの成人男性にしては小さい身体から考えると、もう30%、下手すると以上無くしているかもしれない。
気を失い、血に濡れていても尚まどかは酷く美しかった。目を閉じていると人形ようなの顔をしていると思っていたが、本当にこのまま動かなくなってしまいそうで、俺は怖かった。まどかの酷く美しい姿は俺の好きなところでもあったが、今は怖くてしかたがない。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!