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第1話

『地動説』を
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2025/08/30 04:23 更新



__この世界は、神がお創りになったものである。


地球は宇宙の中心にあり、太陽その他の天体は、地球の周りを回っている。

天文学者プトレマイオスは、これを『天動説』と名付けた。






ヨレンタ
「この世界は、神がお創りになったものである」…
日が暮れてきた頃。


年端も行かないような少女が読んだ書物は、そんな一文から始まった。
ヨレンタ
そういえば、お父様もそんなこと言ってたかしら?
少女__ヨレンタは、首を傾げて文字を追う。
そして、思った。


「この大きな大きな宇宙が、一つの説で、簡単に説明できてしまうなんて」と。


ヨレンタが、天文に興味を持ったきっかけだった。








手元にある砂時計を見やると、もう砂が落ちきりそうになっている。

ヨレンタは本をぱたんと閉じて、椅子を引いた。
ヨレンタ
もうじき、お父様が帰ってくる…!
嬉々とした表情でそう呟くと、小走りで部屋を出る。

そして、玄関の前でしばらく突っ立っていた。

『ガタン』という音とともに、玄関の扉がゆっくりと開く。
ノヴァク
はぁー
全く今日も大変だったなぁ…
だいたいなんで魔女の処刑が私の担当なんだ…
ぶつぶつと呟きながら姿を現したのは、ヨレンタの父、ノヴァクだった。
ヨレンタ
お父様…!
おかえりなさい!
父親の帰りを待ちわびていたヨレンタは、ぱぁっと顔を輝かせる。


ヨレンタの存在に気がついたらしいノヴァクは、目を丸くして、それから、優しい笑顔で答えた。


ノヴァク
あぁ、ヨレンタか。
ただいま、ヨレンタ。
ノヴァクは自身の服の袖についた血を隠しながら、愛しい娘に問いかけた。
ノヴァク
玄関で待っててくれるなんて、優しい子だなぁ。
一体、どうしたんだ?
ヨレンタ
はい、あの…
神様と、てんどうせつ?について書かれた書物を読んで__
ヨレンタはノヴァクの手を引いて、彼に書物を見せに行く。


__とても、幸せだった。



二人とも、こんな幸せな生活が、ずっとずっと、続いて行くと思っていた。


 


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夜空が、本当に綺麗な夜。
10年前のことを思い出したヨレンタは、涙をかみしめた。
ヨレンタ
今、それを思い出すな…!
こ、これからどう行動すれば良いか、考えなくちゃ死ぬだけだ…!
そう、かんがえ、なくちゃ…
彼女は必死に、自分に言い聞かせる。
ヨレンタ
“バデーニさん“と“オクジーさん“が捕まった。
だから、『地動説』の研究は、完全に途絶えたことになる…
馬の手綱を力いっぱい引いて、とにかく走る。
ヨレンタ
それは絶対に阻止しなきゃだめだ…
でも、今の私が、『地動説』に貢献できることなんて…







__だから私は、神と真理のためなら退きたくない。


才能も発展も人生も、いざって時に退いたら終わりだ。








ヨレンタ
…!!
かつての上司から教わり、自身が父に言った言葉を思い出す。



__そうだ。退いてはいけない。








ヨレンタ
私が、繋がなければ。

お二人の思いを。私の、感動を。











___『地動説』を。






【お願い】
これから何度かイラストを投稿するつもりですが、無断転載などはしないでください。

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