キルアを後にし、ゴンを探し続けて数分。
霧がだんだんと濃くなっていくのを感じながら、
先程の道を勘で辿っていく。
走っていると、霧の向こうに人影が
2人ほど見えてきた。
レオリオさんとクラピカさん…?
いや、違う…。
大きな人影が見え、恐る恐る近づいていく。
首を締められ苦しんでいるゴンの姿が見え、
私は大きな声をあげる。
その声に気づいたのか、もう1人が
こちらへと顔を向ける。
ヒソカ……!
やはり、あの異様なオーラの正体はヒソカの
ものだったのか……。
目を向けられ、冷や汗が流れてくる。
すると、苦しみ藻掻いていたゴンの
様子が変わる。
私の声が耳に入ったのか、
ヒソカは再びゴンの方へと目を向けスルリと
ゴンの首を離した。
咳き込むゴンの方へとしゃがみ込むと、
私を伺っている様子はなく、ゴンだけを見て口を開く。
ゴンを見つめると、彼は再び口を開く。
そう言うと、鳴っている通信機を手に取って
電話相手と会話を済ませると、彼は立ち上がった。
そう言うと、ヒソカは近くで倒れている
レオリオを担ぎ上げる。
ゴンはゆっくりと頷くと、
ヒソカは「いい子だ。」と答え、
こちらへと近づいてくる。
彼を避けようと、体を動かすと
ヤツはズイッとこちらへと、
顔を近づけて口を開いた。
こっそりと耳打ちするように言うと、
彼はニコッと笑い、霧の中へと消えていった。
…やっぱりバレてた……。
ヤツのオーラを感じる限り、相当の使い手のはずだ……。
まだ、念能力の事を知らないであろう
ゴンには手加減をしたのだろう。
ヒソカが消えていったことを確認し、
私は座り込むゴンの方へと駆け寄る。
ヒソカとの対面で、汗が止まらないゴンを
横目に見ていると奥の方でクラピカさんの声が聞こえてくる。
だんだんと霧が薄くなっていき、視界が開いていく。
タイムリミットが迫る中、私達はこの機会を
逃すまいと2次試験会場へと足を運んでいた。
鼻の良いゴンは、レオリオの着けていた香水の
匂いを辿りに道を辿っていく。
先程のヒソカの怪しい言葉に、
ゴンは気がかりでならなかったようだ。
ちなみに、私もほんとは気にはなっていた。
ヒソカは、未来予知でもしていたのだろうか……。
それとも…。
クラピカさんによると、ヒソカの中には
人を見極める彼なりの強さの基準があるらしく、
それを行うことで、受験者の力量を測っていたのかもしれないのだという。
ヒソカによる判定に、ゴンとレオリオさんは
クリアした……ということらしい。
クラピカさんは、あの時の私とヒソカの様子が
気がかりだったらしい。
そう答えると、クラピカさんは頭に?を浮かべたまま
だったが、何となく理解してくれた様子。
…それに、念能力の事はまだ彼らに言うべき
ではないだろう。
そういうものって、自分から見つけるに限るって
言うじゃん…?
…だが、あの時ヒソカはきっと私のオーラを
認識していたはず。
それをわざわざ、私に直接伝える意味なんて
なかったはずだ。
そんな疑問が拭えない中、口を開いたのは
ゴンだった。
対等とは言い難いが、それでもゴンは
ヒソカと直接的に対面できている様に見えたが…。
特異な能力を持つ者が、同じような
才能の持ち主を発掘することはよくあるらしく、
あの時、ヒソカにはヒソカなりの勘や経験で
レオリオさんとゴンに、ハンターとしての
素質や将来性を感じたのではないか、と
クラピカさんは言った。
あの時感じ取ったオーラは、私でも計り知れないほどの
実績や経験を積んだ者の気配を感じた。
私達は、まだそれより先の事を理解できる
状態ではない、という事なのだろう。
先程の様子とは売って変わり、
ゴンはこちらを振り向くと好奇心に満ち溢れた
瞳でこちらを見つめていた。
その姿に、少しだけ。
ほんの少しだけ、不思議と関心を
感じてしまったのはおかしなことだろうか…。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。