夢主が現実に存在する肺の病気を患っています。嫌な予感がした方はご自衛お願いします。
ラムネを二本買って帰ってくれば、あなたの下の名前はもう酸素チューブをバックの中にしまい、姿勢良く座って待っていた。
僕に気がつくと宝石のような瞳をこちらに向けて、ふわりと笑みの形に細める。
そう言いながら渡すとあなたの下の名前は目を丸くした後に、お礼を言ってストローを口に含んだ。
ゆっくりラムネの量が減っていくのを眺めながら、僕もラムネに口をつける。
爽やかな甘い香りと炭酸が口の中に広がった。
あなたの下の名前の患う病気の場合、傾けて水などを飲むと上を向いた際に気道が圧迫され、苦しくなりやすいらしい。
だからストローを使って飲むと、気道の圧迫を軽減できる。
本当は炭酸も喉に刺激を与えるから控えた方がいいらしいが、あなたの下の名前が飲むと言ったのならそれを信じよう。無理したらすぐに言うって約束したし。
ゆっくり飲みながら、幸せそうに頰を緩めて返事をするあなたの下の名前は、煌めいていた。
淡い水色の髪も、宝石のような瞳も、祭りの輝きに照らされて、美しくきらきらと光っている。
それは本当に美しくて、綺麗で、どうしようもなく儚かった。
ふと、あなたの下の名前が立ち上がった。
そう言って小さな手が差し出される。
あなたの下の名前のラムネの瓶は空になっていて、それほど時間が経っていたのか、と静かに驚いた。
その手に僕の手を重ねながら、ラムネの瓶を預かり、道端のゴミ箱に捨てる。
あなたの下の名前はゆっくり歩きながら、人気の少ない道へと入っていった。
道の先にある古びた石の階段は、見上げると丘の上あたりまで続いている。草や木の根でボコボコとしていて見栄えが悪いが、人も少ないし、確かに花火も見やすそうだ。
肩に食い込んでいるカバンを持ち、一歩一歩階段を登っていく。
ゆっくり登ってはいるけれど、それでも辛いのか時々立ち止まって呼吸を整える時があった。
花火が始まる時間よりもだいぶ早くに出発したな、とは思っていたが、確かにこのペースならちょうど登り切ったあたりで花火が始まりそうだ。
ようやく最後の一段を登り切り、広場のようになっている草原にポツンと置かれたベンチが見えた。
そのベンチにあなたの下の名前を誘導し、座らせる。
呼吸を整えたあなたの下の名前は、隣をトントン、と手で示した。
素直に従って座ると同時にヒュルルルルル、と音が聞こえた。
ドン────!
パッと夜空に咲く鞠の花が、パラパラと音を立てて散っていく。
その残影が見えなくなる前に、別の花火が花を咲かせた。
色とりどりの鮮やかな花が夜空に咲き誇る中、あなたの下の名前が静かに切り出す。
碧と翠の宝石の瞳に、今日は鮮やかな花が映り込む。
その光を眩しそうに見つめながら、あなたの下の名前の唇が動いた。
ベンチに置いた手が、どちらからとは言わず自然に絡み合う。
少し低くて穏やかな体温を共有して、同じ温度に混じり合っていく。
だって氷織くんは、私に『また』を言ってくれたから。私に明日を生きる勇気をくれたから。
そう口にするあなたの下の名前の瞳に涙の膜が張って、透明な雫となって頰を伝った。
その涙を拭うこともせずに、あなたの下の名前は僕に顔を向け、目を合わせる。
花火の光に照らされる淡い髪が細く揺れる。
穏やかに紡がれる言葉は、不思議と頭の中にスッと入ってきた。
あなたの下の名前は繋いだ僕の手をぎゅっと握り、両手で包みながら口を開く。
その言葉を遮って、空いたもう片方の手で頰を流れるあなたの下の名前の涙を拭う。
弱く息を吸い込んだあなたの下の名前の目をまっすぐ見つめて、胸に溢れる言葉を口に出す。
そう言葉にすると、あなたの下の名前は一瞬、息を呑んだ。
けどすぐに笑った。
花が綻ぶように、美しく穏やかに、目元に雫を光らせて。
その小さな体が、僕の胸に飛び込んでくる。
軽い体を受け止めると、背中に腕を回したあなたの下の名前がくぐもった声で言う。
胸に顔を埋めていたあなたの下の名前は顔を上げると、幸せに輝く笑顔で見上げてくる。
その顎に手を添えて、赤くなる頰を愛しく思いながら撫でた。
また、花火の音がする。
けどその花火を見ることもせず、僕たちは目を瞑った。
距離がゼロになる。
愛しさと、嬉しさと、痛いほどの幸せに脈打つ鼓動の音がした。
柔らかな感触はすぐに離れ、暫くその宝石と見つめ合う。
もう一度惹かれ合うように、愛おしむようなキスをした。
達成感がエグい。
キャプションやタグに書き込み、各話の冒頭に注意書きをつけました………!
心理描写をメインにする、については一応これでやっているつもりです。
私は病気をお涙頂戴の道具にせずに書きたい、と思ってリアルな描写を入れています。綺麗な部分だけじゃなくて、夢主が苦労したところも知ってほしいからです。
なので最低限の描写は入れるつもりですし、恐らく酸素チューブなどもこの先出てきます。
見るのが辛い、不快、と感じる方はここらへんでそっと閉じていただけると自衛できるかと思います。
拙い筆で一生懸命書いていきますので、応援してくれる方は静かに見続けてくれると嬉しいです。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。