私に向けて手招きをする彼女、ソク・リズ。
彼女はald1のファン、だとか。
……私は知らない。アイドルはテレビ番組で流れてきた時のみ視聴している。
今日はリズからの誘いで仕方なくついて行く。
パレード?ファンサ?細かな予定については聞いていない。
全員ファンだろうか。スマホを手に持ち構えている。
これだけの人数だと目的のアイドルが来てから身動きが取れなくなるはず。
今のうちにどこか避難を…。
無理やり私の腕を引くリズ。
幸い身長の低い私達は待機している人々の隙間を通り抜け、一番前の席まで移動した。
リズが指を差す方には、大きな車が一台止まる。
同時に、人々の叫び声があちこちに響き渡る。
周りが騒がし過ぎて、静かな私が逆におかしいくらいだった。
…なのでとりあえずそれなりにテンションを合わせる。
するとどこからか名前を呼ぶ声が聞こえた。
ファンはみんなこんな感じなのか。
喉が枯れるまで声を出して、気づいて貰えるように。
後ろからガツガツと押される。誰も容赦なしだ。
ぞくぞくとメンバーらしき姿が見えてくる。
せっかくなのでしっかり顔を認知しておきたい。
もう頭がパニックになりそうだ。
常に人で暑苦しい状態で、もうそれどころじゃない。
ジョウアンシン、とイサンウォンが、二人くっついてこちらに歩いてくる…が、その時に逆回りしてしまう。
誰よりも高くジャンプをし、両手をあげる。
奇跡的に、二人は同時に振り向いた。
イサンウォンは優しく微笑みながら向かってきた。
私の手をぎゅっと握ってくれたサンウォン。
もちろん知っている訳でもなくファンでもないが、その行動につい声が出てしまうほどときめいた。
…その隙にリズはパシャリと音を立てて撮影する。
リズはがくりと肩を落とす。
ただ私の頭の中には、サンウォンという彼の優しく温かな微笑みが、ずっとループ再生されていた。
そしてその後も数分ほどパレードが行われ、あっという間に終わった。
ぼそりと呟いた私は、きっとこれからも忘れられないに違いない。
私はリズが撮ってくれた写真を、じっと見つめ続けた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。