“未来を変えた”者は、戻った先で記憶をなくす
“過去を変えられた”者は、気付かぬうちに今が変わる
“過去を変えたもの”は…
存在してはならない。
視界いっぱいに広がる星空
頬を撫でる風
お祭りの様に煌びやかに光り、楽しげな音の溢れるファーラモ村
眩しすぎるほどだった
ちょっと、寒いなぁ…
ファーラモ村から少し離れた山で、眼下に広がるハッピーエンドを眺めた
なんで、こんなに…
心にぽっかりと空いた穴を感じながら、目を閉じた
“私”は、仲間を助けたんだ…助けた
もう、思い残すことなんて、何もない
あとは、“るな”に任せればいい
託せばいいんだから…
何も、何も不安なことなんてない
本当に?
自分の心とシンクロしたその声に、閉じていた目を開き、勢いよく起き上がる
そこにいるはずのない人物
るなと、カラフルピーチと、カイクといるはずの人
いつもと変わらない笑みで
いつもと変わらない口調で
いつもと変わらない表情で
エレナはそこに立っていた
なんで今更、来るの
やっと決心ついたのに
やっと…諦められると思ったのに
なんで…
思わず、後ずさる
驚きからじゃない。
嬉しさからでも。
喜びからでもない。
ただ…
怖かった。
恐怖が、私の心にゆっくりと影を落とした
エレナは笑顔で、私の方に寄ってきた
体が震える。
これ以上、近づかないで欲しい。
これ以上近くに来られたら…
望んでしまう。
また…
そんな私の思考は、エレナによって打ち切られた
エレナの手にある本は、確かに私が書いたものだった
無意識に顔が歪むのがわかる
呟くように答える
私を見つめるエレナの目は、“るな”じゃなくて“私”を捉えていた。
未来から来た、ということを、きっとエレナはしっかり分かっている
エレナのるなが私じゃないことを、知っている
一歩、また一歩と、エレナはこちらに近づいてきた
エレナは、るなの額に指を押し当てて、感情の読めない声で、目で言った
…一体何が言いたいの
その後に続くであろう言葉を想像して、唇を噛む
っ…
気づいたら、エレナの肩を抑えて、叫んでいた
滲む目線に先で、エレナの顔がくしゃりと歪むのがわかった
決して涙のせいだけではないだろう
歪めたその目で、彼女は言った
その言葉が耳を掠めた瞬間、るなは記憶よりも小さな体に包まれていた
じんわりと、肩の辺りが湿っていくのがわかる
…エレナは、友達思いだ
とっても優しい
そして、とても
とても…
とても、残酷だ
もうどうしようもないのに
どんどんきつくなる腕を感じながら、目を伏せた
重い口を無理矢理こじ開けて、言葉を発しようとしたその時
聞こえてくるはずのない声が聞こえて、二人揃って背筋が凍った












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。