あの夜は野宿して、次の朝にホテルを探した
とは言ってもお金なんてそうは持ってない
あの人から貰ったお金は使わないって決めてるし
何があっても、どんなに苦しくても使わないって決めた
いっそのこと燃やして来ればよかった
なんて後悔しながらもホテルへ
オンボロの一泊500円ぐらいの激安ホテルに泊まり
何とか寒さをしのぐことにした
オンボロだから隙間風が吹いてきて寒い
でも真冬の外にいるよりかはマシだ
ふと目に映った綺麗な指輪
これも……外されちゃうのかな
グクとの思い出は……残しておけないのかな?
グクを愛した思い出も、愛された思い出も
私の為に懸命になってくれた日、
死ぬことを手を上げてまで止めてくれた日
私を長年想い続けてくれたと知ったあの日
全部、全部、私の大事な思い出
でも、もうグクにとっては要らない思い出なんだよね
また……またグクに女の傷を付けてしまった
私が心の傷を癒やしてあげなきゃいけなかったのに
元から私はグクにそぐわない人なんだ
愛する人を不幸にするぐらいなんだから……
next
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!