事件から数日後。
私はまだ少しの物音にも肩が跳ねてしまう状態だった。
教室に入ると、空気が一瞬止まる。
でも、ひそひそ声じゃなかった。
最初に声をかけてきたのは、クラスの女子だった。
ぎこちないけれど、ちゃんと目を見てくれる。
それだけで、胸が少し軽くなった。
昼休み。
樹音先輩たちと一緒にいると、他の生徒会のメンバーも自然に集まってきた。
そう言ったのは、いつも明るい彼 “壮大先輩” だった。
でも、声は真剣だった。
他のメンバーも、腕を組んで頷く。
責める言葉は、誰からも出なかった。
ただ、
『生きててよかった』
という気持ちだけが、静かに伝わってきた。
放課後。
矢継ぎ早に言われて、思わず苦笑する。
そう言うと、舜斗が即答した。
樹音先輩も小さく笑う。
その言葉に胸の奥がじんわり熱くなった。
家に帰る途中、私は気づく。
あの時、
恋華ちゃんの世界には“私しかいなかった”。
でも今の私の世界には、こんなにも多くの人がいる。
心配してくれる人。
守ろうとしてくれる人。
一緒に笑おうとしてくれる人。
ぽつりと呟くと、樹音先輩が隣でうなずいた。
夕焼けの中、
私は初めてちゃんと前を向いて歩いていた。
“親友”は、ひとりじゃなくていい。
誰かに執着することじゃなく、誰かと支え合うこと。
私は、少し遅れてそれを知った。
でも――
知れたから、もう大丈夫。





















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!