第29話

27
503
2025/12/16 15:00 更新

事件から数日後。

私はまだ少しの物音にも肩が跳ねてしまう状態だった。


教室に入ると、空気が一瞬止まる。

でも、ひそひそ声じゃなかった。
女子生徒
女子生徒
……大丈夫?

最初に声をかけてきたのは、クラスの女子だった。

ぎこちないけれど、ちゃんと目を見てくれる。
クラスメイト
クラスメイト
無理しないでね!

クラスメイト
クラスメイト
何かあったら言ってね!

それだけで、胸が少し軽くなった。



昼休み。

樹音先輩たちと一緒にいると、他の生徒会のメンバーも自然に集まってきた。
島雄 壮大
島雄 壮大
……正直さ、聞いた時ゾッとした

そう言ったのは、いつも明るい彼 “壮大先輩” だった。

でも、声は真剣だった。
三山 凌輝
三山 凌輝
一人で帰ってたら危なかったんだろ?
もう無茶すんなよ

他のメンバーも、腕を組んで頷く。
廣瀬 真人
廣瀬 真人
怖かったよね、
でもさ、助け呼んでくれてよかった


責める言葉は、誰からも出なかった。


ただ、

『生きててよかった』

という気持ちだけが、静かに伝わってきた。



放課後。
池亀 樹音
池亀 樹音
今日も送るから

黒田 竜平
黒田 竜平
明日も誰がつくよ

久保 舜斗
久保 舜斗
連絡、ちゃんと返せよ?

矢継ぎ早に言われて、思わず苦笑する。
(なまえ)
あなた
……私、そんなに心配されキャラだった?

そう言うと、舜斗が即答した。
久保 舜斗
久保 舜斗
今は、そう

樹音先輩も小さく笑う。
池亀 樹音
池亀 樹音
当たり前でしょ、俺彼氏なんだから

その言葉に胸の奥がじんわり熱くなった。



家に帰る途中、私は気づく。


あの時、
恋華ちゃんの世界には“私しかいなかった”。


でも今の私の世界には、こんなにも多くの人がいる。





心配してくれる人。

守ろうとしてくれる人。

一緒に笑おうとしてくれる人。




(なまえ)
あなた
……ちゃんと、周り見なきゃね

ぽつりと呟くと、樹音先輩が隣でうなずいた。
池亀 樹音
池亀 樹音
それでいい……頼るのも、強さだから


夕焼けの中、
私は初めてちゃんと前を向いて歩いていた。
















“親友”は、ひとりじゃなくていい。


誰かに執着することじゃなく、誰かと支え合うこと。


私は、少し遅れてそれを知った。



でも――
知れたから、もう大丈夫。














プリ小説オーディオドラマ