恋華ちゃんはその夜、保護者と一緒に病院に運ばれた。
医師が言うには「情緒不安定状態」。
警察からも話を聞かれたけれど、私は「脅されていた」とは言えなかった。
だって恋華ちゃんは悪い子じゃない。
私を大切にしてくれた友達だから。
ただ──歪んでしまっただけ。
春休みが明けた頃。
私はほとんど眠れないまま登校した。
クラスはざわついていた。噂も飛び交っている。
みんなの勝手な言葉に、胸がギュッと締め付けられる。
私のせいで恋華ちゃんが壊れたのに
放課後、担任に呼び止められた。
分かってる。
だけど、心のどこかで拒否していた。
私は恋華が居ない毎日が耐えられなかった。
数日後
制服のポケットに、小さく折りたたまれた紙が入っていた。
震える指で広げる。
『親友でしょ?会いたいな』
知らないはずの学校のロッカー番号。
放課後私はその場所へ向かった。
向かうとロッカーが少し開いていた。
そっと扉を引くと──中にはスマホが入っていた。
着信
画面には『非通知』
背後から声がした。
振り返ると恋華ちゃんが立っていた。
髪は乱れ、病院のリストバンドがまだ手首に残っている。
息を切らしながら、泣きそうな顔で笑っている。
私は1歩近づいた。
話さなきゃ。伝えなきゃ。
恋華ちゃんは制服のポケットからナイフを取りだした。
その刃先が、私の喉元へ。
震える声で恋華ちゃんが囁く。
その言葉に、私は答えられなかった。
心の底から湧き上がったのは、恐怖なんかじゃない。
私のせいで恋華ちゃんはこうなったという後悔だった。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!