水族館に着いた瞬間、私はテンションが上がっていた。
大きな水槽に、色とりどりの魚たち。
クラゲの展示コーナーに、ペンギンのショー。
「わ、見てあれ!かわいすぎ……!」
目をきらきらさせてはしゃぐ私を、
少し後ろから見ていたふたり。
玲「……あなたの下の名前、マジで楽しそうだな」
永玖「……なあ」
玲「ん?」
永玖「今日のあなたの下の名前、ちょっと……かわいすぎね?」
玲「……永玖も思った?」
2人はお互いに目を合わせて、思わず笑ってしまう。
そのあと、水族館の中を進んでいくうちに、
ちょっとした事件が起きた。
「──え、永玖どこ行った!?」
玲「あっちのクラゲコーナー行きたいって言ってなかったっけ?」
「言ってたかも……てか置いてかれてない?」
玲「はは、たぶん逆。迷子になったの、永玖のほうじゃね?」
「うわ、ありそう……」
そんな会話をしながら、自然と私と玲、
ふたりだけが並んで歩くことになった。
しばらくして──
玲「……なんか、久しぶりだな。と2人きりで話すの」
玲がぽつりと呟く。
「……うん。なんか、変な感じ」
玲「でも、嫌じゃないでしょ?」
「え、なにそれ……ずるいこと言う」
そう言いながら、私は笑った。
だけど──
ほんの少しだけ、鼓動が速くなってる気がした。
玲「……あなたの下の名前ってさ、小学生の頃から変わってねぇよな」
玲がふと、懐かしそうに言う。
「どういう意味?」
玲「魚とか見て、めっちゃ目きらきらさせてさ。
“わぁ〜!”ってテンション上がって……。昔、遠足で水族館来たときも、ずっとそんな感じだった」
「それ……言わないでよ、はずかしい」
玲「でも、そういうとこ──俺、好きだよ」
玲の目が、私をまっすぐに見つめていた。
ふいに、心臓がどくんと跳ねた。
「……やっぱずるい、それ」
玲「ずるいって言っても、ほんとのことだから」
ふいに視線を外して、
照れ隠しのように水槽を覗き込む玲の横顔。
その距離が、いつもより近くて──
ほんの少し、空気が変わった気がした。
クラゲの展示スペースを一通り見終えたあと、
私たちは出入り口のベンチでひと休みしていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。