燈矢君を見送った私は、
今日は野宿だろうなと覚悟している。
泊まるためのお金もなく、
電車に乗って帰るお金もない。
家に帰るのは、歩いて帰れば済む話だ。
治安もそこまで悪くないので、
公園のベンチでゆっくり眠れる。
昔に比べれば、快適すぎるぐらいにはね!
明日の7時までに、
燈矢君が帰って来ずに、
一生会わないのが、
彼にとって一番の幸せだろう。
腹が減ったら、草を食べる。
毒でも何でも、個性があれば、
実質寿命以外では死なずに済む。
周りの大人や子供に怪奇な目で見られても、
襲われないので、気にした方が負けだ。
ここの公園は、草が生い茂って、いい匂いがする。
このまま死んでもいいかも…
ただ、私は、公園内の大きな時計を見て、
怠惰を貪り食った。
日が、地平線に呑まれ、
夜がこの世を支配した時。
少し遠くからだろうか。
誰かの荒い息に痛々しい泣き声。
この世の絶望を冷た込んだかの様な絶望が実体となり、
近づいてきた。
彼の悲痛な泣き声が、
闇に溶けきらず、私の心に何かを、
訴えかけてきた様な気がした。
嗚咽混じりなその泣き声の少年を
私はそっと抱きしめた。
そして、大体1時間ほどで泣き疲れ、
しゃっくりに変わってきた様だ。
そして、涙とともに鼻水も出てきた様で、
私の服は悲惨な状態になっているが、
そんなものどうにでもなる。
小さくこの子は頷いた。
私は、地面にしゃがみ込み、
腕を後ろに回す。
いわば、おんぶである。
すんなり乗ってくれたので、私は一定のリズムで歩き出した。
私は、歩きながら、少し問いかけてみた。
「うん」や「そうだったんだね」
なんて少しも気遣うことを言えない私に
嫌気がさしてきた。
彼は、彼なりにしんどいだろうに。
私よりは小さいとは言え、
子供と言うには少し大きい。
まるで、アダルトチルドレン。
完全に子供だと思ってみていたが、
この子はけっこう大きい。
背中の中にいるこの子は、
スヤスヤと眠ってしまっている様だ。
泣き疲れたこの子を起こすわけにもいかないので、
私の体は火を吹くぜ。
過去に働いた、現場職の工事の仕事で培った筋肉を、
今こそ発揮するべきだろう。
私は朝日が出る30分前まで歩き続けて、
やっと家に着いた。
12時間ぐらい、人をおんぶして歩いたのは初めてだ。
個性で筋組織を治しながら進んだので、
そこまで辛くなかった。
久しぶりに、自分の個性が、
誇らしく思えてきた様な気がする。
私のモーニングコールで、
浮腫んだ彼の目が細く開いた。
次回 He wants home.












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!