山の方へ行くにつれ街灯が減っていきついには月明かりだけになってしまった。
笑われるかもしれないが俺は暗い場所が苦手だ。でも何時から苦手意識を持つようになったのかなどは覚えてない。
しばらく歩き進めると俺が歩いてる方向に家が建っていた。いや、大きさ的にもあれがアリス館だろうなと思いつつ家の前まで辿り着く。
目の前に聳え立つ館は怪しげなオーラを放っている。
俺は気がつくとドアノブに手をかけていた。脳内では"開けるな"と危険信号を発しているのに対しそれを無視するかのように身体はドアを開けた。
ドアを開けた先にはリビングのような部屋が広がっていた。部屋全体が赤をメインの色としていて、ちょうど真ん中辺りがディスプレイになっている大きな机と背もたれが大きい椅子が5つ。
声を掛けてきたのはこの館の執事のような人だった。凄く大人っぽくて、話すのが無駄に緊張する。性別は分からないが年齢は俺と同じくらいだと思う。
アリスはこの館の執事だそうだ。館の名前に"アリス"と入っていたから館主だと思ったが館主は別にいるらしい。まあそのうち紹介されるだろう。
アリスが自己紹介を終えると先程目に入った大きな椅子に座るよう促された。座らない理由もないので俺は玄関から1番近い椅子に座った。
見た目通り、座り心地がよく俺のような庶民には到底手の届かないような価値のあるものだろう。
気がつくとアリスが消えていた。周りを見渡しても気配すら感じられない。暫く座って待っていると後ろから足音が聞こえてくる。確認しようとするが、後ろを向いても自分が座っている椅子の大きい背もたれが見えるだけだった。
アリスの声が聞こえたと思ったら数名の男女が空いてる椅子に座った。
アリスは深深とお辞儀をする。顔を上げ、指を鳴らしたかと思うと机の中央のディスプレイ部分に図が表示される。
軽く腰を上げディスプレイを覗き込むとそれは"館内図"と左上に書かれたこの館の地図だった。

個室が用意されているということは、この館で数日間滞在するということだろうか。
ここに集められた目的が分からない以上なんとも言えないが、招待状には館にいる間は現実世界の時間が止まると書かれていたし、有り得るかもしれない。
館内図を見る限り館が大きい割には部屋数が少ない。それほど1つの部屋が広いんだろうか。
またアリスが指を鳴らしたかと思うとディスプレイに映っていた館内図は消えた。
アリスの言葉を遮るように俺が発言する。
こんな提案をしたのには理由がある。
俺は席に座った時から一言も喋らずうつむいている4人の事が気になっていた。
着ている服などは全く違うが4人とも暗いオーラを放っていて、俺1人だととてもじゃないが話しかけにくい。
ならこの場を使ってせめて名前だけでも聞いておけば後々話しかけることが出来るかもしれない。そう思ったからだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!