三ツ谷隆×龍宮寺堅
花吐き病
ドラケンが女々しい
三ツ谷あんまり出てこない
嘔吐表現あり
OK?
side 龍宮寺
いつからだったか。花を吐きはじめたのは。
嘔吐中枢花被性疾患_通称『花吐き病』は、強い片思いを拗らせると発病。名前通り花を吐く。そして、吐き出された花に触れると感染して、触ったヤツも花吐き病を患う。
治療法は、好きなヤツに告白して、YESの返事を貰うこと。両思いになれば、白銀の百合を吐く。それで完治。
もし告白の返事がNOだったら…完治せず、最悪の場合、死に至る。
恋をしていることは自覚していた。けど、まさかこんな病を患うとは、思わなかった。
オレが好意を寄せているのは、同じ東京卍會所属で、弍番隊隊長の、三ツ谷隆。
いつから、とかは覚えてない。気付いたら、好きになっていた。
けど、男が男を好きになるのは可笑しいから…。だから、この感情を消そうとした。
けど、出来なかった。消そうとすればするほど、感情がデカくなっていったから。
だから、隠すことにした。三ツ谷にも、周りにも。
その結果がこれだ。片思いを拗らせて、花吐き病を患った。
また、見せたくもバレたくもないものが増えた。
こんなオレを見たら、三ツ谷にも、他のヤツらにも、幻滅される。_それは嫌だ。
…あぁ、こんな女々しいオレなんか、嫌いだ。
今日も今日とて、花を吐く。
胃の辺りがグルグルして、気持ち悪い。
発病してからほぼ毎日のように花を吐いているが、この感覚に未だ慣れない。
口から花弁を吐き出す。そして、吐き出した花弁の、花の名前を調べる。
それが、ここ最近の日課。
確か、一昨日は赤のガーベラ。昨日はサボテン。
花言葉は
ガーベラ:愛情
サボテン:枯れない愛
らしい。
今日は…オキナグサ。花言葉は『告げられぬ恋』。
_心の内を見透かされているようで、苦しくなる。
苦しくて、辛くて、視界に入れたくなくて、素早く袋に入れて、口を結んでから、ゴミ箱に捨てる。
_温い液体が、頬を伝う。
…あぁ、泣いてるのか、オレは…。
何故だろう。花吐き病を発病してから、精神的に不安定だ。_いや、精神が不安定というより、感情を制御出来ていないと言う方が正しい。
理由は、分からない。気付いたら何故か泣いてるということが増えた。
いつもより感情が大きくなって、少しの事でキレそうになったり、泣きそうになる。
一度、集会後に幹部メンバーの数人と話している時に、理由もなく涙を流していた時があった。その時は何とか誤魔化したけど、それからは、外では無理矢理感情を抑えることにした。その反動のせいか、体調を崩すこともあった。けど『オレは東卍の副総長だから』『オレならまだ頑張れる』なんて言い聞かせて、必死に耐えていた。
だから、なんだろうか。
最近は、上手く笑えているのかも分からない。
無理しすぎたのかもしれない。けど、隠すためにはこうしないとだから…。
多分、勘の良いヤツは、もう気付いてるだろうな。
実際、正道さんにも、店の嬢にも『何かあったか?』って聞かれた。
けど、オレは『何でもねぇ』って答えた。
もしこの時に話していれば、少しでも楽になれたはずなのに、オレは馬鹿かよ…。
もう、感情を抑えるのも、限界に近い。
早く、こんなに苦しいことから解放されたい。
早く、三ツ谷に、この感情に気付いてもらいたい。
なんて、自分から伝えねぇと気付いてもらえねぇのに。
ベッドの上で横になって、丸くなる。
こんな苦しい思いをしたのは、初めてだ。
だから、どうすればいいのか、分からない。
思いを伝えないと、苦しいまま。
そんなことは分かってる。
でも、伝えて嫌われてしまうのも怖い。
とりあえず、今日はもう寝て、気持ちを落ち着けようなんて思って、目を閉じた。
『男ガ男を好きニなるナンテ、気持ちワリィ』
そんな声が聞こえて、ハッと目を覚ます。
目の前は一面、暗闇。
その中に見える、金の『初代東京卍會』の文字。
東卍の、特服。
その次に見えた、ピンクゴールドと、白に近いグレーの髪色。
他にも、沢山の色。
自分も、いつもの特服を見に纏っていて、いつもの辮髪の状態だ。
『花ヲ吐くナンて、キモちわリィ』
『同性愛?ナニそレウケる』
『ソんなヤツ、要らナイんダケど』
『キエロ』
『キモチワリィ』
そんな沢山の言葉が矢となって、心に突き刺さる。
やっぱり、オレが可笑しいんだ。
やっぱり、嫌われる。幻滅される。
汚れたものを見るような目が、オレを見つめる。
三ツ谷に、オレの愛称を呼ばれる。
三ツ谷の言葉に、心臓が痛いほど跳ねる。
三ツ谷に、拒絶された。
その事実が、酷く辛く、苦しい。
心臓がドクドクと煩い。
頭がズキズキと痛む。
呼吸が、苦しい。
三ツ谷が、離れていく。
そう言って引き止めたいのに、声が出ない。
そう願うも、声は出ない。
出ないまま、三ツ谷は視界から消えた。
声が出たと思った時には、もう遅かった。
呼吸が狂う。
まるで溺れているかのように、息が出来ない。
そのまま、意識は沈んでいった。
続く
皆さん、お久しぶりです。
作者のSAKです。
いつも作品を読んでくださり、ありがとうございます。
いつも、物語の更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
学校が始まり、課題等もこなさないといけないため、物語を書く時間が短く、中々更新出来ないのが、今の私の現状です。
どうか、気長に待っていただけると幸いです。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。