前の話
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幹部の朝というものは、早い。職業柄、窓は開けず仕舞いで、この部屋に自然の光が差し込むことはない。のそりと起き上がって、慣れ切ったその薄暗い部屋の明かりを付けた。
はぁ、と呆れ混じりの溜め息を吐く。毎朝現れるコイツは、現首領兼 ”自称” 私の執事の風楽奏斗。勿論だが、私は執事など雇っていないし、ましてや首領に執事を頼むわけがない。仕事とはやたらと区別を付けたがるし、その心理は全く読むことが出来ないし、本当にお手上げだ。
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目の前で楽しそうに頬杖をつくのは、四大幹部内の一人である渡会雲雀だ。同期というわけではないが、首領からの信頼なのか、一緒にされることが多かった為にそこそこ仲が良い。よくこうして先程のように首領の愚痴を零している。因みにこのことは首領のとっくのとうにバレている。だが、何のお咎めも無いということなので、きっとあの人の想定内の範疇なのだろう。
…でも一つだけ、雲雀に話していない、あの話の続きがある。
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はぁ。ともう一度深い溜息を吐いた。ようやく解放される…あの首領から。絡まれること自体も面倒臭いのだが、もっと面倒臭いのは無礼を働いてしまうのではないかという心配だ。特に其処に神経を尖らせる為、大変疲れるのだ。
仕事着を出そうと動き出そうとした矢先、耳に何か柔らかいものが触れたような感覚がした。何かと思い振り返る間もなく、耳元で囁かれた。
思わずバッと振り返り、目を見開いてアイツを見た。風楽首領はニヤリと笑って、ひらひらと手を振りながら部屋を後にしていった。
思いも寄らない風楽首領の行動に、私は頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!