付き合って3年の彼氏が居る。
その彼から「話がある」とメッセージが入っていた。
仕事終わりに待ち合わせ場所へと向かい、彼を待った。
急な話でそこから動けなかった。
少しずつ遠くなっていく彼の姿。
すると、周りから悲鳴が聞こえてきた。
その方を見ると...車がこちらへ向かってくる。
足がすくんで動けない。...その後に感じた衝撃と激痛。
声も出ず、目の前がかすんで、意識をなくした。
シルクside
彼女に背中を向けて歩き出すと、後ろから悲鳴と凄まじい
衝撃音が聞こえてきた。
ふと振り返ったとき、血の気がひいた。
車が建物へ衝突したらしいが、その場所は⋯
さっきまで彼女がいた場所。そんな⋯⋯まさか⋯⋯⋯
俺は彼女がいた場所へ走った。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
その場所に彼女は倒れていた。
意識はないらしく、ぐったりしている。
俺は一生懸命に名前を呼んだ。
気付くと病院の手術室の前の椅子に座ってた。
あの光景が目に焼き付いて⋯強く目をつぶったら、
靴音が聞こえて、俺の近くで止まった。
思わずその人を見ると、それはあなたのお兄さんだった。
偶然、1度だけ街中で会ったことがあった。
そのとき、「私のお兄ちゃんなの。」と言ってた。
どれくらい経っただろう。
しばらくして手術中のランプが消えた。
看護師さんが出てきて、説明のためにお兄さんを別室へと通して、そのあと状況をお兄さんから聞いた。
まず命には別状ないこと。ただ頭を打ってしまったため、
検査をしながら経過をみること。
左腕の骨折と、右足の骨折があること。
顔には、擦り傷が数ヶ所あること。
今は麻酔で眠っているが、じきに目を覚ますらしい。
でも、集中治療室に居る為、家族のみの面会らしい。
まだ、恋人の俺は⋯面会が出来なかった。
面会もできず、いつまでも病院にいる訳にはいかなくて、
あなたが目を覚ましたら連絡をもらうようにお願いした。
連絡が来たのは、翌日の午後だった。
集中治療室から一般病棟に移動したと聞いた。
いてもたってもいられず、病院へと急いだ。
聞いていた病室へと着く。息を整えて扉を開ける。
そこには⋯⋯顔に数カ所、手当後のガーゼで覆われ、
点滴が繋がってベッドに横になってるあなたが居た。
少し話したいとお兄さんに言われて、休憩所へ。
そこで聞いた話は衝撃的だった。
それから俺は、会いに行ける時間があるときは、
お見舞いに行っていた。
あれから数日が経った今でも、記憶が戻らないまま。
今日も、あなたに会いに病室へ向かった。
ノックをして、ドアを開けるとお兄さんが居た。
挨拶をしてあなたを見ると、寝ていた。
静かに部屋を出て、院内のカフェへと来た。
注文したコーヒーが届いても、お兄さんは黙ったまま。
お兄さんから突然の『あなたを忘れてほしい』と言われて⋯
1人になっても、しばらく動けなかった。
~病室~
シルクからの連絡をブロックして、着信も拒否して、
そして私からも連絡することがなかった。
寂しさを紛らわすようにリハビリに励み、入院してから
約2ヶ月、退院日が決まった。
兄は嬉しそうに、『退院の日、迎えに行く』と言っていたが、その日はどうしても仕事が外せないと残念がっていた。
荷物は退院前日にお見舞いに来た兄が持って行ってくれて、
入院費まで払ってくれた。
お世話になった方々にお礼を言い、病院を出た。
兄からは『タクシーで帰るように!』と連絡があった。
でもあまりの天気良さに、少し散歩をしたくなった。
無理は禁物なので、そんな長い時間歩けないけど⋯
深呼吸をして、ゆっくりと歩き始める。
少し歩いたところで、向こうから歩いて来る人が。
邪魔になるといけないから、端に寄り歩く。
そのとき、兄からメールが入った。
相変わらず過保護な兄からのメールに少し笑いそうになる。
そのとき、前に人の気配がして顔をあげた。
もう会うことはないと思っていたシルクに、ビックリして
頭が真っ白になって言葉も思考も止まる。
シルクの真剣な表情に負けて、2人でカフェへ。
飲み物を頼み、店員さんがテーブルへ届けてくれる。
─────俺たちの家に─────
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。