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第24話

最愛
66
2024/01/12 09:14
付き合って3年の彼氏が居る。
その彼から「話がある」とメッセージが入っていた。


仕事終わりに待ち合わせ場所へと向かい、彼を待った。
シルク
シルク
...急に呼び出してごめん。
少し距離置きたいんだけど。
(なまえ)
あなた
何で...急に...
シルク
シルク
悪い。今、仕事が忙しくて...
別れるとかじゃないけど......
(なまえ)
あなた
・・・
シルク
シルク
悪いんだけど...分かってくれ。
(なまえ)
あなた
......分かった。
シルク
シルク
ごめんな。また連絡する。
じゃぁ......俺、行くわ。
急な話でそこから動けなかった。
少しずつ遠くなっていく彼の姿。
(なまえ)
あなた
(好きだったのは私だけだったのかな...)
すると、周りから悲鳴が聞こえてきた。
その方を見ると...車がこちらへ向かってくる。
足がすくんで動けない。...その後に感じた衝撃と激痛。
声も出ず、目の前がかすんで、意識をなくした。


シルクside
彼女に背中を向けて歩き出すと、後ろから悲鳴と凄まじい
衝撃音が聞こえてきた。

ふと振り返ったとき、血の気がひいた。
車が建物へ衝突したらしいが、その場所は⋯
さっきまで彼女がいた場所。そんな⋯⋯まさか⋯⋯⋯
俺は彼女がいた場所へ走った。
シルク
シルク
(大丈夫だよな?巻き込まれてないよな?)
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
その場所に彼女は倒れていた。
意識はないらしく、ぐったりしている。
俺は一生懸命に名前を呼んだ。
シルク
シルク
(頼む!目を覚ましてくれ!)
シルク
シルク
(このまま⋯サヨナラなんて嫌だからな!)
シルク
シルク
(もう一回⋯俺の名前⋯呼んでよ⋯⋯⋯)





気付くと病院の手術室の前の椅子に座ってた。
あの光景が目に焼き付いて⋯強く目をつぶったら、
靴音が聞こえて、俺の近くで止まった。

思わずその人を見ると、それはあなたのお兄さんだった。
偶然、1度だけ街中で会ったことがあった。
そのとき、「私のお兄ちゃんなの。」と言ってた。
シルクくん⋯⋯だっけ?
シルク
シルク
はい。お久しぶりです⋯
あなたは?事故に合ったって聞いて⋯⋯
シルク
シルク
まだ⋯手術中です。
あなた⋯⋯何でこんなことに⋯⋯
シルク
シルク
すみません⋯⋯
いや、シルクくんは何も悪くないだろ。
相手が⋯⋯よそ見運転してたらしいね。
シルク
シルク
でも、あの場所を指定したのは俺なので⋯
そんなに自分を責めないでよ。
あなたもきっとそう言うはずだよ。


どれくらい経っただろう。
しばらくして手術中のランプが消えた。

看護師さんが出てきて、説明のためにお兄さんを別室へと通して、そのあと状況をお兄さんから聞いた。

まず命には別状ないこと。ただ頭を打ってしまったため、
検査をしながら経過をみること。
左腕の骨折と、右足の骨折があること。
顔には、擦り傷が数ヶ所あること。

今は麻酔で眠っているが、じきに目を覚ますらしい。
でも、集中治療室に居る為、家族のみの面会らしい。
まだ、恋人の俺は⋯面会が出来なかった。

面会もできず、いつまでも病院にいる訳にはいかなくて、
あなたが目を覚ましたら連絡をもらうようにお願いした。
連絡が来たのは、翌日の午後だった。
集中治療室から一般病棟に移動したと聞いた。
いてもたってもいられず、病院へと急いだ。

聞いていた病室へと着く。息を整えて扉を開ける。
そこには⋯⋯顔に数カ所、手当後のガーゼで覆われ、
点滴が繋がってベッドに横になってるあなたが居た。

シルク
シルク
あなた⋯⋯
(なまえ)
あなた
・・・
シルク
シルク
大丈夫⋯⋯じゃないよな。
⋯よかった。目が覚めて。
今は、痛み止め効いてて⋯
ちょっとボーッとしてる。
それに⋯⋯あまり覚えてないらしい。
気づいたら病院にって感じみたいだね。
シルク
シルク
そうですか⋯
少し話したいとお兄さんに言われて、休憩所へ。
そこで聞いた話は衝撃的だった。
実は⋯シルクくんのこと覚えていない。
シルク
シルク
えっ?⋯覚えていない?
そう⋯⋯
シルク
シルク
俺⋯これからも会いに来ていいですか?
それは⋯シルクくんが決めることだよ。
それから俺は、会いに行ける時間があるときは、
お見舞いに行っていた。
あれから数日が経った今でも、記憶が戻らないまま。

今日も、あなたに会いに病室へ向かった。
ノックをして、ドアを開けるとお兄さんが居た。
挨拶をしてあなたを見ると、寝ていた。
シルクくん、ちょっといい?
あなたのこと起こしたくないから
とりあえず場所変えようか⋯
静かに部屋を出て、院内のカフェへと来た。
注文したコーヒーが届いても、お兄さんは黙ったまま。
シルク
シルク
あの⋯⋯何かありました?
あなたは⋯今も記憶は戻っていない。
記憶が戻るかどうかも分からない。
シルク
シルク
そうですね。
それでさ⋯シルクくん。
シルク
シルク
はい。
⋯⋯あなたのこと忘れてほしい。
シルク
シルク
えっ?何ですか、急に。
急でごめん。あなたのことは忘れて⋯
シルクくんには次に進んでほしい。
シルク
シルク
そんな⋯
もう、病院に来なくてもいいよ。
仕事しながら来るのは大変でしょ。
シルク
シルク
でも⋯顔見ないと落ち着かないんです。
きっと⋯そのうち慣れるよ。
辛いのは今のうちだけだよ。
シルク
シルク
・・・
本当に今までありがとうね。
じゃぁ⋯俺は部屋に戻るね。
お兄さんから突然の『あなたを忘れてほしい』と言われて⋯
1人になっても、しばらく動けなかった。




~病室~
(なまえ)
あなた
おかえり。
ただいま。今、あのこと⋯
シルクくんに言ってきたよ。
⋯本当にそれでいいのか?
(なまえ)
あなた
うん、もう決めたことだから。
でも⋯まだ好きなんだろ?
何で離れないといけない?
(なまえ)
あなた
事故に合う前に、シルクから言われたの。
仕事が忙しいから⋯距離を置きたいって。
(なまえ)
あなた
⋯シルクは離れたがってた。
別れ話まではなかったけど。
(なまえ)
あなた
でも、私がこんなことになったから⋯⋯
仕事忙しいのに、お見舞いに来てくれて⋯
記憶なくしてないって言わないわけ?
(なまえ)
あなた
もう⋯会うつもりないし。
(なまえ)
あなた
私のことは気にしないで⋯生きてほしい。
仕事も恋愛もね。好きにしてほしいから。
シルクには⋯幸せになってもらいたいの。
私は⋯シルクに幸せにしてもらったから。
俺⋯⋯やっぱり全然納得できねーよ!
そんなに泣くくらいなら、離れんなよ!
(なまえ)
あなた
もう、私のことはいいの。
⋯お兄ちゃんもごめんね。
嫌な役⋯やらせちゃって。
お前のためならどんな役でもやるよ。
カワイイ妹からのお願いだからな。
(なまえ)
あなた
わがまま聞いてくれてありがと。
お兄ちゃんも恋人つくりなね。
私は大丈夫。⋯心配しないで。
俺のことはいいんだよ。
今は恋人は⋯いいかな。
仕事も忙しくなるしさ。
(なまえ)
あなた
大きいプロジェクト始まるんだっけ?
無理はしないでね。ちゃんと食べてね。
忙しいとすぐ食べるの後回しなんだから。
分かってるよ。大丈夫、心配すんな。
今回はチームメンバーにも頼るから。
マジで信頼できる人達ばかりだから。
(なまえ)
あなた
私もリハビリとか頑張んないとな!
早く元の生活に戻りたい。それに⋯
仕事もお休みもらっちゃってるし。
⋯⋯なかなかお見舞い来れないかも⋯
でも、何かあったら連絡していいから。
(なまえ)
あなた
相変わらず心配症なんだから。
でもそのときはお願いします。
シルクからの連絡をブロックして、着信も拒否して、
そして私からも連絡することがなかった。

寂しさを紛らわすようにリハビリに励み、入院してから
約2ヶ月、退院日が決まった。
兄は嬉しそうに、『退院の日、迎えに行く』と言っていたが、その日はどうしても仕事が外せないと残念がっていた。

荷物は退院前日にお見舞いに来た兄が持って行ってくれて、
入院費まで払ってくれた。

お世話になった方々にお礼を言い、病院を出た。
(なまえ)
あなた
(外に出たの久しぶりだ⋯)

兄からは『タクシーで帰るように!』と連絡があった。
でもあまりの天気良さに、少し散歩をしたくなった。
(なまえ)
あなた
(暖かいし、散歩くらいいいよね。)
(なまえ)
あなた
(ずっと病室だったし。やっぱり外はいいな。)
無理は禁物なので、そんな長い時間歩けないけど⋯
深呼吸をして、ゆっくりと歩き始める。


少し歩いたところで、向こうから歩いて来る人が。
邪魔になるといけないから、端に寄り歩く。
(なまえ)
あなた
(どこからタクシー乗ろうかな?)
(なまえ)
あなた
(やっぱりちょっと体力落ちたかな?)
(あまり長くは歩けそうにないなぁ⋯)
そのとき、兄からメールが入った。
【迎えに行けなくてごめん】
【絶対タクシーで帰ってよ】
【無理しちゃダメだからな】
(なまえ)
あなた
(ふふっ、もう過保護なんだから。)
相変わらず過保護な兄からのメールに少し笑いそうになる。
そのとき、前に人の気配がして顔をあげた。
(なまえ)
あなた
・・・・・
シルク
シルク
退院おめでとう。
(なまえ)
あなた
⋯⋯あり⋯がとう⋯⋯
シルク
シルク
ふふっ、驚きすぎじゃね?
もう会うことはないと思っていたシルクに、ビックリして
頭が真っ白になって言葉も思考も止まる。
シルク
シルク
元気そうだな。
(なまえ)
あなた
⋯⋯うん⋯⋯
シルク
シルク
まさか、歩いて帰ろうとしてた?
(なまえ)
あなた
⋯⋯いや⋯⋯
シルク
シルク
少し話したいんだけど、大丈夫?
(なまえ)
あなた
⋯⋯うん⋯⋯
シルク
シルク
そこのカフェで話そう。
立ったままは辛いだろ。
(なまえ)
あなた
いや、別に⋯⋯
シルク
シルク
じゃぁ⋯言い方変える。
退院お祝いとして行こ。
シルク
シルク
あなた、カフェとか好きだろ。
お祝いとして俺、奢るから。
(なまえ)
あなた
そんなお祝いだなんて⋯⋯
奢ってもらうわけには⋯⋯
シルク
シルク
⋯ごめん。どうしても話がしたい。
シルクの真剣な表情に負けて、2人でカフェへ。
飲み物を頼み、店員さんがテーブルへ届けてくれる。
(なまえ)
あなた
あの⋯話って
シルク
シルク
お兄さんから本当のこと聞いたよ。
記憶⋯⋯なくしてなかったんだな。
(なまえ)
あなた
えっ?
シルク
シルク
2人でちゃんと話し合ってって。
あなたは離れるつもりでいるけど。
離れるにしても話もしないで、
お互い納得しないとダメだって。
(なまえ)
あなた
お兄⋯そんなこと言ってたんだね。
ごめんね。記憶なくした振りして。
シルク
シルク
いいよ。俺のこと考えてのことだろ?
全部聞いた。泣きながら決めたって。
泣かせたくなかったのに⋯ごめんな。
(なまえ)
あなた
ううん。勝手に決めてごめんね⋯
シルク
シルク
俺さ、お兄さんからあなたのこと
忘れてくれって言われてさ⋯⋯
(なまえ)
あなた
うん⋯⋯
シルク
シルク
何で急にって⋯何かしたのかとか
色々考えたけど、分かんなくて⋯
シルク
シルク
でも、俺は会いたいし⋯そばに居たい⋯
でも記憶のないあなたに⋯⋯俺の存在は⋯
もしかしたら苦しめてるのかとか⋯
シルク
シルク
負担になるなら離れた方がいいのかとか⋯
毎日色々考えて、すげー悩んだ。でも⋯⋯
いくら考えても答えはなかなか出なくて⋯
シルク
シルク
でも好きなのは変わらないし、
そばに居たいのも変わらない。
シルク
シルク
色々考えるより、気持ちを伝えて
これからのことを考えようかと⋯
シルク
シルク
俺は、あなたが好きだ。そばに居たい。
⋯一緒に居ることを選んでほしい。
(なまえ)
あなた
私が、離れることを選んだら?
シルク
シルク
⋯⋯ごめん。俺が離してやれない。
お前の居ない人生は考えられない。
(なまえ)
あなた
でも⋯仕事忙しいんでしょ。
また⋯離れたくなったら⋯
シルク
シルク
大丈夫。あなたを失う怖さを知ったし、
あなたがそばにいない地獄も知ったし。
⋯あんなの二度とゴメンだからな。
シルク
シルク
仕事の代わりはいくらでもあるけど⋯
あなたの代わりは誰にも出来ないんだよ。
シルク
シルク
ずっと⋯俺のそばにいてほしい。
できるなら⋯一緒に暮らしたい。
もう離れたくないし、離さない。
(なまえ)
あなた
私は⋯⋯
シルク
シルク
あなたは誰が好き?
(なまえ)
あなた
⋯⋯シルク。
シルク
シルク
一緒に居たいのは?
(なまえ)
あなた
⋯シルク。
シルク
シルク
俺と離れたい?
(なまえ)
あなた
離れたくない⋯
シルク
シルク
うん、俺も同じ。一緒にいよ。
もう離さないから覚悟してね。
(なまえ)
あなた
うん、一緒に居る⋯
シルク
シルク
とりあえず⋯俺のとこに引っ越す?
(なまえ)
あなた
えっ?
シルク
シルク
一緒に暮らしたいって言ったろ。
(なまえ)
あなた
そうだけど⋯本当にいいの?
お兄ちゃんにも言わないと⋯
シルク
シルク
お兄さんからは了解もらいました。
幸せにしてくれるならいいよって。
シルク
シルク
何もいらないから、あなただけ来てよ。
俺のこと⋯これからも好きでいて。
(なまえ)
あなた
うん、好き。ずっと好きでいる。
シルク
シルク
うん、俺もずっと好き。
もう一生、離さないから。
シルク
シルク
さぁ、そろそろ行こうか。
ほら、手つないで帰ろう。


─────俺たちの家に─────

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