午前中の間 指南を受けるソクジン様がいる書室であなたと護衛をした後、ソクジン様の自室に戻って、王室の食事会が夜に行われるまでの時間を過ごす。
俺たち護衛は基本的に守られる人のそばを離れることが出来ないので、護衛中の食事や手洗に行く時は必ず一人ずつ交替して行くようにしている。
俺のあとに昼食をとっていたあなたが戻ってきてしばらくすると、朝にソクジン様が言っていた書物の商人が訪ねてきた。
勤勉なソクジン様はよく書物を買うので、よく訪れて来る商人とは自然と俺たちも顔見知りになる。会釈をして部屋の中に彼を通した。
話し声がしばらく聞こえた後、部屋の中からソクジン様に呼ばれたので、あなたをその場に残して静かに中に入り戸を閉める。
たいてい護衛は守られる人のいる部屋には入らず、戸の外で待機しているのが普通だが、ソクジン様はたまに俺たちを部屋に呼び入れることもあった。
上座に座るソクジン様と その前に座っている商人の間には質の良い藤紫色の布が敷かれ、その上に色鮮やかな表紙の本が並べられている。
ソクジン様の手には縹色の表紙の分厚い本があって、俺が欲しいと思っていたものだ。
傷一つないきれいな頬を持ち上げておかしそうに少し笑い、ソクジン様は商人に向き直って本を数冊買う。
彼は商人を帰した後、いくぶんか緊張がとけたかのように座布団の上で姿勢を崩した。
顔なじみの商人といえど、第一王子の位で人と無邪気に関わることは難しい。ふと人に見せた隙が自分の立場を脅かすようなことは この権力争いの絶えない王宮では珍しくなく、たとえ人望が厚く地位が磐石なソクジン様でさえ その渦中にいる。
俺たち護衛も、他に人がいるときは自然とソクジン様にならった態度をとるようになっている。
常に気を張らなければいけない主人が、自分たちの前ではリラックスした風に振る舞うのに信頼の厚さを感じて、誇らしい。
俺に買った本をソクジン様が手に取り、若干眉間に皺を寄せて笑う。
ソクジン様は微笑んだ後、何か思い出したように振り返って、数冊重ねられた書物たちから一冊を抜き出し俺に差し出す。
受け取って軽く目を通してみると、様々な宝石について解説が書かれているもののようだった。
本をよく読まれるソクジン様は俺に本を貸して意見交換を求めることがたびたびあった。
しかしたいていは解釈の難しい学術書などで、俺自身の学びにもなるし、普通なら手に入らないようなものを読めることもあっていつもありがたいのだが、
肩をすくめなんでもないように言うので、そういうものかと納得する。
礼を言って護衛に戻った後、随分と涼しくなった昼下がりの時間は何事もなく平和に過ぎていった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。