第22話

第20話
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2024/07/27 11:24 更新
まどか
.......誠一
ぐっ、と胃がせり上がってくる感覚になる


動揺のあまり吐き気がするなか、誠一の手紙を見る


お母さん、お父さん、弟さん、妹さんにむけた
4通の手紙


僕はガラスケースに両手をつき、すがりつくように前のめりになったまま手紙を読み始めた
誠一
父上様。
俺を厳しくお育て頂き、
感謝の言葉もございません
誠一
甚大しんだいなる御恩に死んで報いる光栄を
得ました
誠一
幼少の頃より念願を果たし
御国のため華と散ります
誠一
皇国の永遠無窮えいえんむきゅうを信じて行きます

全く迷いを感じさせない凛とした字

あまりにもまっすぐな言葉

敬語で書かれているけど、どこか誠一を感じる
まどか
(あぁ、誠一だ)
まどか
(あの日僕を助けてくれた
誰よりも眩しい笑顔を持っている)
まどか
(誠一のまんま.......)
誠一
お母様。
日本女性の鏡そのものの強く優しく時に
厳しい母に愛され育ち俺は幸せでした
誠一
どうか悲しまないでください
誠一
これは喜びの死です。
誠一
なにも思い残すことはありません
誠一
俺はお先に天国に行き、
のんびりと待っています。
誠一
いつまでも、いつまでも
誠一
どうかご達者で
お母さん宛に書かれた手紙は、お父さん宛に
書かれた手紙よりも柔らかな字で書かれていた
まどか
.......っ
優しく包み込むような笑顔が目に浮かぶ
誠一
らん
今回、お兄ちゃんは
特別攻撃隊員に選ばれた
誠一
これは目に余る光栄で、国のために散ることを許された喜び、それを強く感じる
誠一
この手紙を読んでいる時には
敵艦と海に沈んでいると思う
誠一
大和男子としてこれ以上の光栄は無い
誠一
短い一生であったが、たくさん生きた
誠一
蘭、立派な日本男児となり、
母をよろしくな




誠一
春香はるか
誠一
お兄ちゃんらしいことは
出来なかったけど、いつも気にかけてた
誠一
直に戦争も終わって学校にも行ける
誠一
その日が来たらお兄ちゃんの分も
沢山学んで
誠一
親孝行するんやで



僕はゆっくり瞬きする


誠一の存在を確認できたような感じがして
嬉しかった
まどか
(弟、妹さん宛の手紙は
最後だけ話し言葉だな)
ゆっくり歩き出したとき、一通の手紙に
僕の目が止まった


その手紙だけまだ真新しいように見える


封筒から出さず大事にしまい込んで、
ずっと誰も読んでいないような

不思議に思って顔を近づけてみる
まどか
……っえ、

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