翌朝。霧の中を歩く君たちの前に、目指すべき「終わりの草原」が姿を現し始める。見渡す限りの緑と、風に揺れる色鮮やかな花々。教典が説く「神の国」を体現したような絶景だ。
だが、僕の目には、その草原が巨大な「口」を開けて待っているように見えた。
草原の端に咲く花が、時折インクが滲んだように形を崩し、再び元の姿に戻るのを目撃する。この世界は、誰かの筆致によって維持されている不安定な虚構なのではと思い始める。
根拠など無い。気のせいと言われればそうにも思えてしまう。しかし、僕の脳はこの推測をどこか確信のように捉えていた。
ティアナが指差す先、草原の中央に白く輝く祭壇が鎮座している。そこへ辿り着けば、僕の任務は終わる。
同時に、僕の本来の記憶──現実世界での僕の名前や、あの古本屋の光景が、急速に色褪せていくのを感じた。
あなたの聖騎士のあなたの名前(男性名)の任務をはっきりと自覚し、彼女との別れを強く惜しむ。
「終わりの草原」の中央、白く輝く祭壇の前に辿り着いた。風に揺れる花々は、まるで誰かの囁き声のように不気味な音を立てている。
ティアナは静かに祭壇へと歩み寄り、祈るように両手を組み、その場に膝を突いた。
その瞳には、儀式を全うしようとする義務感と、それを拒もうとする生への渇望が、激しく火花を散らしていた。
彼女の声が、微かに、だが決定的に震える。
その瞳に宿るのは、覚悟と、そして言葉にできない深い諦念に満ちた、あまりに無垢な祈りであった。
僕は剣を抜き、彼女の首に当てる。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!