第25話

#24 脱獄遊戯の前準備
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2025/01/11 07:40 更新
シグマ
はァ⁈
ドストエフスキーの異能を暴けだと⁈
ニコライ・ゴーゴリ
嗚呼。そうだよ
眉を寄せながら言われたことを叫び返したシグマに、ゴーゴリはにっこりと微笑みながら返す。あなたはため息に近い吐息を出しながら欠伸した。
シグマ
いやいやいや、何故私が…?第一もう其処にあなたの名字あなたがいるじゃないか
ニコライ・ゴーゴリ
そーれーはーね、何か面白そうだから一緒に連れて行くことにした!それだけ!
あなた
そう、連れてってもらうことにしたー
シグマ
(そういえばこういう、ネジが8本外れたような奴らだった…)
一般人を自身の作戦に巻き込むテロリストと、それを乗り気で受ける一般人グレーゾーンの女。
頭のネジが外れていないというなら、運命のネジが外れているとしかいいようがない構図である。
ニコライ・ゴーゴリ
でもでも、此れはあなたちゃんの為でも、君のためでもあるのだよ?
ニコライ・ゴーゴリ
あなたちゃんはドス君にとある誤解を解きにいける
ニコライ・ゴーゴリ
君はドス君が死ぬことによって身の危険が無くなり、安息の「家」を手に入れることが出来る
ニコライ・ゴーゴリ
正にWin-WinならぬWin-Win-Win!
私って天才!!
ってことで準備してくるーとニコライは何処かへ転移してしまった。相変わらず一方通行だ。まさに会話のドッヂボールを体現したような男である。


まあ、そんな円滑剤ニコライのお陰で会話が途切れていなかったことも事実。
ニコライが消えた事であまり話せない(互いに話しにくい)二人だけが残され、気まずく痛い沈黙に包まれたのは言うまでもない。






俯いて黙っていたシグマがあなたに話しかけた。
シグマ
…部屋に仕掛けをしていて、済まなかった
あなた
うん、知ってる
シグマ
…部屋を襲ったりして済まなかった。殴って構わないし殺してもどうでもいい
あなた
うん知ってる
あなたは地面に座ったままのシグマを真顔で見下しながら返した。シグマはそのまま耐えきれなくなった様にまた俯いた。その隣にあなたが座る。
あなた
人を殺してまであのカジノを救いたかった事も、お前が努力してる生かすかなくない支配人だって事も
シグマ
は…?何でそれ…
真逆ゴーゴリが言ったのか?
これ、とあなたが見せたものを見てシグマは目を見開いた。それは客のコードや性質が書かれた数枚の資料だった。所々破れたり焼けたりしているのを見るに、先程シグマが戦っていた通信室か、支配人室から落ちたものだろう。
あなた
お前が落ちてくる直前落ちてきたやつだ。こういうのは大抵オーナーが持っている筈
あなた
そんなものが落ちてくるということはお前が金庫ではなく近くに置いてたってことだ。瞬間記憶能力保持者やそういう異能を使ってるならそんな事をしない
相槌を忘れるシグマから紙を取って少し見た。手書きで客の持病や軽い悩みなどの、当たり障りはないが、丁度よく必要な情報が書いてある。
あなた
はぁあ
あなた
……どうやったかは知らないけど、二万人全部覚えたんでしょ、根気で
あなた
そんな奴にそんな風に謝られたら、私も何時迄も腹を立ててないで許さないと
シグマ
あ、え、いいのか?
あなた
それに…貴方、これから4、5日一緒に過ごす人間が自分に危害を加えそうだったら…意地でも寝ないでしょ?
シグマ
え?
ニコライ・ゴーゴリ
あー、二人ともお待たせー!!はい取り敢えずお水!!
あなたとシグマはそれぞれ受け取った。二人とも受け取っては一気に飲む。あなたは一息に飲み干していた。シグマはそれを見て怪訝な顔をする。ニコライは豪快だねえと気ままに笑っていた。
ニコライ・ゴーゴリ
如何?味は
あなた
美味しいけど、手伝わずに休んでいいの?
まあ、飲んだからには休むけども
ニコライ・ゴーゴリ
嗚呼、其処は気にしないで大丈夫。私一人でも安心安全に着くと思うよ
あなた
じゃあ。て事でおやすみ支配人さん
シグマ
は?
そう言って後ろにバターンと倒れるあなたの背中を慌てて支えたシグマはニコライを見る。ニコライはひゅーと口笛を吹いて歩き出した。
ニコライ・ゴーゴリ
さて我々はこれから遥か遠くの刑務所に向かう訳だが
シグマ
(気にせず行くのか…)
シグマ
…そういえば先刻準備と言っていたな。車か何かを準備したのか?
ニコライ・ゴーゴリ
え無いよ
シグマ
えっ
あなたを落としかけたシグマからあなたを受け取って外套の中に入れる。そしてまたニコライは歩き出した。
ニコライ・ゴーゴリ
大丈夫、大丈夫。 
準備は元々してあったから
シグマ
いや上空から見たが、本ッッッ当に周囲に何も無かったぞ!
ニコライ・ゴーゴリ
騒ぐと傷口に響くよ
ぜー、と息をしたシグマにペットボトルを差し出す。シグマは礼を言って飲み始めたが、その水を半分少し飲んだところで止まった。
シグマ
待て。これは新しいやつだな…しかも先刻もあなたの名字を外套に入れていた…ということは…近くに何かあるのか?
ニコライ・ゴーゴリ
おっとバレたか。三歳のシグマ君がこんなに賢く育って、感動だよ!
シグマ
巫山戯ているのか?
そう言ったシグマの視界が急速に霞んでいく。音も遠くなり、何やら話しているニコライに被って、あなたが思い浮かんだ。
それに貴方、これから4、5日一緒に過ごす人間が自分に危害を加えそうだったら意地でも寝ないでしょ
シグマ
(若しかして…)
シグマ
ペットボトルの水に睡眠
言い切れずに倒れたシグマをニコライは颯爽と抱えて何処かへいってしまった。



































《5日後》

欧州異能刑務所ムルソーにて

あなた
んー、何だか居心地がいいね。綺麗で
ニコライ・ゴーゴリ
刑務所だけどね!
あなた
良いんだよ。
そう云いながら肩や腕などをもんで身体をほぐすあなたにニコライも外套を正す。シグマは困った様に口を開いた。
シグマ
あの、私はどうすればいいんだ?ゴーゴリ
ニコライ・ゴーゴリ
え、知らない!
かちん!といった音があなたの耳に聞こえた気がした。シグマはニコライに殴りかかる。ニコライは異能ででシグマの手を宙に接続させて反応を楽しんでいた。


あなた
…こういう奴だから諦めなよ。貴方のことは屹度太宰か何かが何とかすると思うよ
まあそうなのか?
と納得し掛けたシグマだが不可解な点を指摘した。
シグマ
ん…あなたの名字、少し待て。
何故太宰が此処にいることが判るんだ?
シグマ
其れは政府の極秘内容だ。若しかしてお前、政府関係者か?
疑いと怯えの目を向けるシグマににこりと笑いを返して自分の口元に手を当てた。
あなた
真逆。あんな定年退職し難いところに。まあ、何で判ったかは…種明かしといこうか
5日前
シャワーを浴びていると誰かが入っているのに気がついた。
あなた
おや、誰かな?
中島敦
えっ、
泉鏡花
……貴女は…あなたの名前さん…
あなた
前の桟橋で会った子か。こんな所でどうしたの?あの後、大丈夫だった?
泉鏡花
あっ、今安吾さんから、「あなたちゃんは早くそこから逃げた方がいい」って太宰さんが言ってたって来まし
刹那二人は消えてしまった。
恐らく誰か空間移転系か瞬間移動系の異能者がいたんだろう。

また、三人とも監視カメラが映らない死角に立っていた。これは今虎少年が持っていた通信機器で繋がっている奴が指示したものだろう…目視無しでは出来まい。そして早く逃げた方がいいと言ったのが本当に太宰だとすると今絶賛捕まっている太宰は、刑務所からそれを言ったことになる。でもそれを指摘するには先ず私が此処にいることを知らなければならない。しかし、通信機を持っていた方は何も報告していなかったし、太宰が捕まったと報道された時、まだ私はカジノにいなかった。

知り得る手段といえば…牢屋で天人五衰の内通者とでも繋がっているのか?

いや、それはあり得ない。 
それなら可能性はただ一つ。
今、捕まっていて自由に太宰と話せる奴…
あなた
(極め付けにあー、あの絨毯…中には…)




立原道造
ってうわあ!!!
立原道造
手前あん時の!!
あなた
そこからは貴方の知ってる通り。因みに私が此処に来てるのも太宰が居ると予想していたから。万一の時に助けを求められる
シグマ
…ッあ…?そんなことで特定が可能なのか?いや、考えつくのか?
あなた
そうだよ、出来るの。誰でも出来る
あなた
私は考察厨で、よく人を観察して、想像する。今回は偶然それが当たっただけ。
何か嫌な記憶を掘り起こしたかの様に、ふう、と息を吐いた。
あなた
役人だ何てとんでもないね。只の相手の事とか心理を読み取るのが得意な一般人さ
あなた
まあ、こんな刑務所にいなけりゃの話ではあるけれど
うはは、と乾いた顔で笑ったあなたに、シグマは警戒していた様な表情を僅かに解いた。ニコライはそれを見て手を打ち合わせる。
ニコライ・ゴーゴリ
助手二人の話し合いも済んだことだ!!
改めて急ごう!
シグマ
嗚呼。そうだな
あなた
そうだね、流石に警備員が来そうだし
ニコライ・ゴーゴリ
はい助手行くよー
シグマ
って私は助手ではない!
外套に乗り込め〜とばかりにニコライは自身の外套にあなたとシグマを入れようと外套を掲げる。あなたから見た其れは、まるで演劇前に掛かるオペラカーテンの様だった。視界を覆っていくそれを空虚な碧眼で見つめる。
あなた
……何かイヤな予感がするなあ



視界が暗転した。




…____刑務所での決闘が、もう直ぐ始まる。

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