恋愛なんて、俺とは無縁だと思っていた。
小さい頃から今まで、随分とチヤホヤされてきて、女という生き物に疲れた。
別に人生には疲れていない。
けど、なんとなく、死にたかった。
この俺の気持ちを分かってくれる人なんて、いるはずが無い。
俺はもう、生きることに対して執着しなくなった。
高校に入学してからも周りに女が寄ってくる。
俺はいつのまにか、外部の音声をシャットアウトできる能力を身に付けていた。
我ながら天才だ。
でも1人だけ、全くもって俺に近付いてこようとしない女がいた。
窓の向こうを見つめるその横顔。
彼女の瞳は、今の俺と同じように、真っ黒だった。
それから佐伯に興味が湧いた。
こいつはきっと、俺の唯一の理解者だ。
それから毎日、観察して、どう近付こうか考える日々。
ある日ふと思った。
なぜ話したこともない人を、こんなに追いかけているんだろう、と。
俺は理解者が欲しかった。
最初はその気持ちだけだったはずなのに、今では彼女に俺を見つけて欲しいと思っている。
目と目を合わせて、私たち同じだね、って言って欲しかった。
それを想像するだけで、俺の心は救われていった。
まだ逝かないで、俺の理解者。
佐伯、君は俺の特別な人なんだから。
俺は偶然を装った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。