youside
4月。
緊張感のある 体育館の中で、
私は高校の入学式に 出席していた。
中学の頃の 同級生達とは
別の 遠い高校にしたため、
知っている顔なんて、一人もいない。
親に頼み込んで、
「一人暮らしがしたい」と この高校を選んだものの
やっぱり 寂しさは残る。
更に そんな会話まで聞こえてくるものだから、
私の心の中の不安は どんどん大きくなる一方だった。
やっと 校長先生の話が終わった頃には、
さっきまで 元気良く話していた女の子達も
こっくりこっくりしていた。
不安しかない これから先の高校生活、
果たして私は 馴染めるのだろうか。
窓から吹き込んできた 生暖かい春風にあたりながら、
ずっと そんな事を考えていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!