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第4話

嫉妬〜甲斐田〜
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2025/12/24 20:32 更新
あなた
晴〜?
甲斐田 晴
…うーん
あなた
ねぇ晴ってば〜!
甲斐田 晴
……
あなた
…もういい!

勢いよくドアをバタンと閉めて部屋を後にする。

晴は研究を開始すると満足がいくまで止まらない。
そんなの重々承知の上で付き合った。覚悟できてるつもりだった。

でも、やっと私も休みが取れて2ヶ月ぶりに来たのに、ちょっとくらい構ってくれてもいいじゃん…
あなた
はぁ…せっかく来たのに暇になっちゃった。
弦月 藤士郎
あれ、あなたの下の名前ちゃん?久しぶりじゃ〜ん!
あなた
ゲンちゃん!久しぶり!!

ゲンちゃんはとっても可愛くって中性的だが男性だ。晴に紹介してもらって知り合い、今ではなんでも話せる親友になった。
よくメイクについてやファッション誌などをみて情報交換をしている。
弦月 藤士郎
元気だった?
あなた
う、うん…
弦月 藤士郎
え、あなたの下の名前ちゃん!?どしたの!
一度溢れてしまうと止まらない涙をなんとか止めようと、嗚咽混じりに両手で目を擦る。
弦月 藤士郎
こらこら、擦っちゃ腫れちゃうよ。
とりあえずこっちおいで。

彼は私の腕を掴むとハンカチで目元を優しくそっと拭いてくれる。その優しさが余計に私の涙腺を刺激する。

優しく腕を掴んだまま彼は歩きだし、私も親に叱られた子供のように大人しくついてく。
連れてこられたのは彼の部屋だった。
弦月 藤士郎
それで一体どしたの?
また晴君関係?
あなた
…違うの、私が悪いの。
弦月 藤士郎
そうなの?
でも泣いちゃうくらいしんどいなら、僕に吐き出しちゃいなよ。親友でしょ?
そう言って彼は保冷剤をハンカチで包んだものを
「目、腫れちゃやでしょ?」と手渡してくれる。
あなた
あのね…。

その言葉を皮切りに目から溢れる涙と一緒に吐き出てくる私の拙い愚痴を、彼は相槌を打ちながら静かに聞いてくれた。
弦月 藤士郎
なーるほどね。
まず僕から一つ。あなたの下の名前ちゃんは何も悪くないから!
あなたの下の名前ちゃんに甘え過ぎなんだよ、晴君は。
あなた
でも、晴が忙しいのはわかってたし…
弦月 藤士郎
確かに仕事量は多いけど、ただ研究バカなだけだよ。
むしろみんなにも休憩入れろって怒られてるんだから。
あなた
そうなの?
弦月 藤士郎
そーそー。だからあなたの下の名前ちゃんが悪いわけじゃないから!
ちょっとお灸を据えないとねぇ〜。

そう言うと彼はニヤリと小悪魔のような顔を浮かべた。
甲斐田side


とりあえずひと段落ついたなぁ。
ふぅ…と体を延ばす。

今何時くらいだ?と時計を見ようとした時、
弦月 藤士郎
おーい。

ひらひらと手を振りながら研究室に入ってきたのは同僚の弦月と、僕の彼女であるあなたの下の名前だった。

ーーーなぜか手を繋いで。
それも、恋人繋ぎ。
甲斐田 晴
えっ…?
戸惑いを隠せず思わず目を見開きつつ、つい声が漏れた。
弦月 藤士郎
晴君ってもうあなたの下の名前ちゃんのこと好きじゃないんだよね?
ならさ、僕がもらってもいい?
甲斐田 晴
っは……、

そう言って見せつけるように繋いだ手を振りながらこちらを見て笑う弦月に、戸惑いと怒りが入り乱れ、僕はうまく言葉が出せない。

仲が良いのは知っていた。
よく連絡をとっているのも。

でも、いつの間にそんな仲に?
弦月 藤士郎
だって晴君、あなたの下の名前ちゃんより研究の方が大事なんでしょ〜?
せっかくわざわざ桜魔まで会いにきてくれてるのにほったらかしなんだもん。
そうだよね?

研究の方が大事というのは声を大に否定できる。
ただ行動は正に図星で、ぐうの音も出なかった。
甲斐田 晴
…だからってなんで弦月がもらうって話になるわけ?
弦月 藤士郎
だって僕の方が大事にできるもん。
あなたの下の名前ちゃんのこと大好きだし!

ね、あなたの下の名前ちゃん。
あなた
えっと…

気まずそうにこちらを見た彼女と彼女を愛おしそうに見つめる弦月に、頭が真っ白になった。
あなた
えっ!ちょっと!?
甲斐田 晴
…。

僕は2人の手を引き剥がすと無理矢理彼女の腕を掴んでズンズンと足音をたてるかのように歩き出した。

後ろで弦月がニヤニヤしながら手を振ってることも知らず。
あなたside


連れて来られたのは彼の自室だった。

放り投げられるように彼のベッドに倒されると、覆い被さるように両手で力強く肩を抑えられる。
思わず顔を顰める。
彼に文句の一つでも言おうとすると、
あなた
ちょ、ちょっと、
甲斐田 晴
もう、甲斐田のこと、好きじゃなくなっちゃったの…?
あなた
え?
甲斐田 晴
ごめん。
本当に、来てくれてたの、気付かなかったんだ。
謝るから、悪いとこ頑張って治すから、捨てないでよ…。

彼の目は不安に揺れ、泣き出しそうな顔をしていた。

ああ、やっぱり私はこの人のことが好きだ。
泣き出しそうなこの瞳を綺麗だと思ってしまう私は、少し悪趣味なのかもしれない。
甲斐田 晴
っ、!

私は彼の頬にそっと手を添える。
あなた
捨てるわけないじゃん。
私も晴が好きなんだから。
甲斐田 晴
ほんとに…?
あなた
当たり前でしょ。
甲斐田 晴
よ、よかったぁ〜…

へなへなと力が抜けたのか、そのまま私に倒れかかってくる彼を抱きしめ頭を撫でる。
甲斐田 晴
もう弦月と手繋いだりしないでね?
あなた
え〜?それはわかんないなぁ。
甲斐田 晴
えっ、なんで!?
あなた
晴がちゃんと休憩して、私のことも構ってくれたらしないよ。
甲斐田 晴
うぅ…
僕の彼女、優しくて可愛すぎて困るんだけど…。

そう言ってぐりぐりと頬擦りしてくる彼の面倒を見れるのは、私だけなのかもしれない。

後でゲンちゃんにもお礼しないとな。


色々なことを思案するが、
とりあえず今はこの幸せな時間を大切にすることにしよう。

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