勢いよくドアをバタンと閉めて部屋を後にする。
晴は研究を開始すると満足がいくまで止まらない。
そんなの重々承知の上で付き合った。覚悟できてるつもりだった。
でも、やっと私も休みが取れて2ヶ月ぶりに来たのに、ちょっとくらい構ってくれてもいいじゃん…
ゲンちゃんはとっても可愛くって中性的だが男性だ。晴に紹介してもらって知り合い、今ではなんでも話せる親友になった。
よくメイクについてやファッション誌などをみて情報交換をしている。
一度溢れてしまうと止まらない涙をなんとか止めようと、嗚咽混じりに両手で目を擦る。
彼は私の腕を掴むとハンカチで目元を優しくそっと拭いてくれる。その優しさが余計に私の涙腺を刺激する。
優しく腕を掴んだまま彼は歩きだし、私も親に叱られた子供のように大人しくついてく。
連れてこられたのは彼の部屋だった。
そう言って彼は保冷剤をハンカチで包んだものを
「目、腫れちゃやでしょ?」と手渡してくれる。
その言葉を皮切りに目から溢れる涙と一緒に吐き出てくる私の拙い愚痴を、彼は相槌を打ちながら静かに聞いてくれた。
そう言うと彼はニヤリと小悪魔のような顔を浮かべた。
甲斐田side
とりあえずひと段落ついたなぁ。
ふぅ…と体を延ばす。
今何時くらいだ?と時計を見ようとした時、
ひらひらと手を振りながら研究室に入ってきたのは同僚の弦月と、僕の彼女であるあなたの下の名前だった。
ーーーなぜか手を繋いで。
それも、恋人繋ぎ。
戸惑いを隠せず思わず目を見開きつつ、つい声が漏れた。
そう言って見せつけるように繋いだ手を振りながらこちらを見て笑う弦月に、戸惑いと怒りが入り乱れ、僕はうまく言葉が出せない。
仲が良いのは知っていた。
よく連絡をとっているのも。
でも、いつの間にそんな仲に?
研究の方が大事というのは声を大に否定できる。
ただ行動は正に図星で、ぐうの音も出なかった。
気まずそうにこちらを見た彼女と彼女を愛おしそうに見つめる弦月に、頭が真っ白になった。
僕は2人の手を引き剥がすと無理矢理彼女の腕を掴んでズンズンと足音をたてるかのように歩き出した。
後ろで弦月がニヤニヤしながら手を振ってることも知らず。
あなたside
連れて来られたのは彼の自室だった。
放り投げられるように彼のベッドに倒されると、覆い被さるように両手で力強く肩を抑えられる。
思わず顔を顰める。
彼に文句の一つでも言おうとすると、
彼の目は不安に揺れ、泣き出しそうな顔をしていた。
ああ、やっぱり私はこの人のことが好きだ。
泣き出しそうなこの瞳を綺麗だと思ってしまう私は、少し悪趣味なのかもしれない。
私は彼の頬にそっと手を添える。
へなへなと力が抜けたのか、そのまま私に倒れかかってくる彼を抱きしめ頭を撫でる。
そう言ってぐりぐりと頬擦りしてくる彼の面倒を見れるのは、私だけなのかもしれない。
後でゲンちゃんにもお礼しないとな。
色々なことを思案するが、
とりあえず今はこの幸せな時間を大切にすることにしよう。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!