第14話

13 呪い
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2024/08/19 09:00 更新
ガラリと視界が切り替わる。

一面の闇。

僕以外、誰もいない。

さっきの傷も嘘のように無くなっている。

辺り一帯を包み込む呪力から、恐らく生得領域の中だろう、なんてことをぼーっと考えていた。
夏油傑
悟。
不意に僕を呼ぶ声。僕がずっと聞きたかった──
夏油傑
君に言いたいことがあるんだ。
五条悟
傑!!
五条悟
(言いたいことなんてどうでもいい。良かった、僕はまだ、傑が話しかけてくれるだけでこんなにも嬉しい。乾いた荒野に雨が降り注ぐように、心が喜びで満たされていく。)
五条悟
(もっと。その先まで。傑に触れたい。)
その一心で、僕は傑に手を伸ばした。

しかし、
夏油傑
触らないでくれるかい。
その手は触れることなく弾かれた。
五条悟
え、
夏油傑
悟、いい加減解ってくれないか?君のせいで私はずっと苦しいんだってこと。
五条悟
は、はぁ?何言ってんだよすぐ
夏油傑
君は良いよね。その生まれながらにして得た力で、何でも出来てさ。
五条悟
……は?
夏油傑
その素晴らしい無下限と反転術式で、私達みたいに痛い目に遭うこともない。そんなんで私達の気持ちなんか判る筈がないよね。
……今、何が起きてるんだ?

目の前で展開されている状況が理解できない。
五条悟
(待って、何だよそれ。本当に全部、俺のせいだったってこと?)
五条悟
(…俺がずっと、傑を苦しめていたの?)
五条悟
(…いや、騙されるな、僕。ここは呪霊の領域内だ。そもそも傑が居る筈ないし。)
五条悟
(──僕の所に、来てくれる訳がない。)
五条悟
(どうせ精神的なダメージを与えてくる類の術式だろう。そんなんが効く筈な)
夏油傑
私が悟を見捨てた?君は変な勘違いをしているようだね。悟が私を置いて行ったんだ。悟が私を見放したんだ。
五条悟
……っ、そんな事ッ…!
口ではそう言ったが、頭の中で変に納得してしまった。
そうだ、確かにその通りだ。

俺が、最初に傑を置いていった。

俺が勝手に“最強”になってしまった。
夏油傑
そのくせ私が美々子と菜々子に付きっきりになったら勝手に奪われたとか思い始めて。
五条悟
でも、
夏油傑
私は君の所有物じゃない。
五条悟
でも、僕達は親友じゃ
夏油傑
────親友?君が?
五条悟
その一言に、僕は頭が真っ白になって、その先何を言うつもりだったのか分からなくなった。
夏油傑
君なんか、もう友達でも何でもないさ。
吐き捨てるように傑はそう言い、僕に背を向けて遠退いていく。
五条悟
(やだ、待って。)
その言葉が僕から発せられることはない。闇に呑まれていく傑を、僕は必死で追いかける。
五条悟
すぐ、る…!!
喉から絞り出した声で傑を呼ぶと、いかにも面倒だといった感じで傑は振り返り、去り際にこんな捨て台詞を吐いた。
夏油傑
君は、君一人で最強なんだろ。
五条悟
……ッ!!
ヒュッ、と喉から変な呼吸音がした。刹那、
七海健人
もう、あの人一人で良くないですか?
五条悟
……え、
非呪術師
化物
非呪術師
気色悪いんだよ!
非呪術師
気持ち悪い
非呪術師
ふざけんな!
非呪術師
触らないで!!
非呪術師
人殺し
非呪術師
悪魔
五条家の男
六眼さえあれば
五条家の女
悟様が悪いのです。
五条家の男
お前は無下限と六眼さえ使えればそれで良いのだ。
五条家の男
それ以外に、お前への存在意義など無い。
五条悟
あ……あぁ…
憎悪、嫉妬、憎しみ。
羨望、期待、自己否定。
嫌悪、娼嫉、責任転嫁。
妬み、嫉み、──呪い。

全部、全部。僕を呪う言葉。

知ってたけれど、ずっと、見ないように、認めないように無視し続けた、呪いの塊。
夏油傑
悟、お前のせいで私はずっと苦しかった。
五条家の男
お前のせいで世界の均衡は崩れた。お前が世界を壊したんだ。
非呪術師
お前のせいで俺の家族は死んだんだ!
非呪術師
お前のせいで私は、家族も、家も、財産も、何もかも失ったのよ!!
お前のせいで

全部、お前のせいで

お前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでおまえのせいでおまえのせいでオマエノセイデオマエノセイデ!!

全部、お前のせいだ!!
五条悟
ッあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!
居た堪れなくなって、僕は耳を塞いでその場に蹲った。
全身を駆ける灼ける様な痛み。心臓を掻き毟りたくなる様な不快感。僕への呪いが、黒板を引っ掻く様な音になって全方向から僕を襲う。頭に響く不協和音。
五条悟
(いたい、いたい、いたい。
………あれ、何が?
ぼくは、どこがいたい?
…わからない。
もう、なにもかんがえられない。
たすけて、誰か……

…すぐる、傑。)
僕の意識はそこで途絶えた。



To Be Continued

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