その夜も、僕は同じ坂道を上っていた
昨日のことが、どうしても頭から離れなかった
あの言葉を、何度も反芻してしまう
きっと意味なんて無いのだろう
それでも、笑う横顔にかすかに滲んでいた
少しの翳りを思い出すたび、
冗談だとはとても思えなかった
観測所の扉を開けると、やっぱり彼女はいた
細い肩をすくめて、望遠鏡を覗き込んでいる
僕に気づくと、彼女はぱっと笑った
彼女は『まあね~~!!』と
少しばかりのドヤ顔で言ってくる
その後、
ごくごく自然な動作で片手を上に持っていき
星空の中で一際輝いている月を指差した
月は、静かに形を変えている
彼女の声が、
その違いを鮮やかに浮かび上がらせる
突拍子もなく言われたその言葉に
ただただ、オウム返しをしてしまった
笑い声は夜の静けさをほどいていく
気がつけば、昨日より近くに座っていた
会話は辿々しいけれど、
沈黙は不思議と苦にならない
月の光に照らされながら、
僕らはただ時間を分け合っていた
彼女が本当に「月になる」のかどうか、
答えはまだ遠い
けれど、只々くだらない話をする時間は
日々の隙間で、夢の中のようなな非日常を
しっかりと実感させていった













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。