第4話

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2025/10/24 14:00 更新
琉斗のリズム

ゆきだるまファミリー
琉斗は、朝がちょっと苦手だ。
目覚ましが鳴っても、布団の中でぼーっとしている時間が長い。
けれど、それは眠いからじゃない。
彼の頭の中では、朝からもう“世界の音”が全部聞こえているのだ。

鳥の声、電子レンジの音、冷蔵庫のモーターの振動、
妹・奈々姫の笑い声、ママのスリッパの音。
全部が一度に押し寄せてくる。

「うるさい」と言いたいわけじゃない。
ただ、音の波に呑まれて、自分の位置が少し分からなくなる。

それが琉斗の朝の始まり。
ADHDという名前
「りゅうとくんはね、脳の中で“音”や“考え”がすごく速く走ってるの」
ある日、病院で先生が言った。
「だから、ちょっと集中しにくかったり、
気になることがいっぱい見えちゃうんだね。」
ママはその時、少し泣いた。
でも琉斗は、首をかしげて言った。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
ぼく、こわれてるの?
先生は笑って首を振った。
「ううん。むしろ、世界の音がよく聞こえる“特別なアンテナ”を持ってるんだよ。」

それが、琉斗のADHDの説明だった。
琉斗の世界は、いつも少し速い。
ママが話し終える前に次の話を思いついてしまう。
教室では黒板よりも外の風に目がいく。
「集中して」と言われても、彼にとっては“どれを”集中すればいいのか分からない。

でも、そんな琉斗の「速さ」を一番に理解してくれたのが、
“公認お兄ちゃん”たちだった。
世界の速さは何でもないよ君の心さ🎸

初めてMrs. GREEN APPLEの若井滉斗が家に来た日。
琉斗は何も話さなかった。
ただ、部屋の隅で指をトントンと机に当てていた。

若井はその音をじっと聴いて、
若井滉斗
若井滉斗
それ、いいリズムだね
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
…リズム?
若井滉斗
若井滉斗
うん。ギターのリズムに似てる。
その日、若井はギターを出して、
琉斗のトントンのテンポに合わせて弾き始めた。

琉斗は目を見開いて、初めて声を出した。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
これ、ぼくのリズム?
若井滉斗
若井滉斗
そう。りゅうとくんの音
それから、琉斗は少しずつ話すようになった。
彼にとっての“言葉”は、いつも“音”の中にあるのだ。
ルールじゃなく、ハーモニー🎹
学校では、「落ち着きがない」と言われることもある。
でも藤澤涼架は言う。
藤澤涼架
藤澤涼架
落ち着くって、必ずしも“静かにする”ことじゃないよ。
自分のテンポで心が休まるなら、それでいいんだ。
藤澤はキーボードで、琉斗の歩くスピードに合わせた音を奏でる。
ポロン、ポロン。
藤澤涼架
藤澤涼架
ね、歩くたびに音が鳴るって楽しいでしょ?
琉斗は笑って、少し駆け出した。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
もっと速く!
藤澤も笑ってテンポを上げる。
その瞬間、二人のリズムが重なった。
🎤Fukaseの優しい間
Fukaseが来た日、琉斗は最初からリラックスしていた。
なぜかというと、Fukaseの話し方には“間”がある。
ゆっくり、息をするように言葉を置いていく。

その“間”が、琉斗には心地よかった。
Fukase
Fukase
りゅうと、今日はどんな音が聞こえる?
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
時計の音。あと、奈々姫が歌ってる。
Fukase
Fukase
いいね、それ、今日の曲にしよう。
Fukaseはメモを取り出し、
琉斗の言葉をそのまま歌詞にした。
“時計の音で踊る僕
君の歌が聞こえる”
琉斗は、はにかんだように笑って言った。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
ぼくの歌、できたの?
Fukase
Fukase
うん。君の耳は、世界を音楽に変える耳だよ。
🌿元貴が見つけた“色”

大森元貴は、琉斗を“色の人”と呼ぶ。
大森元貴
大森元貴
りゅうとくんは、音を色で感じてると思う。
ある日、みんなでお絵描きをした。
奈々姫はカラフルな虹、
琉斗はぐるぐると混ざった青とオレンジを描いた。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
これはね、ぼくのあたまの中
元貴はその絵を見つめて言った。
大森元貴
大森元貴
うん、すごくきれい。僕の音楽も、きっとそんな感じだよ。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
ほんと?
大森元貴
大森元貴
うん。いろんな音が混ざって、でもちゃんと“りゅうと”っていうひとつの絵になるんだ。
琉斗はうれしそうに笑った。
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
ぼく、こわれてないんだね。
大森元貴
大森元貴
当たり前。君はアートの途中なんだよ。
🌙夜のあとがき

寝る前、あなたはそっと琉斗の部屋をのぞく。
彼はイヤホンをつけて、小さな音で音楽を聴いていた。
そのメロディは、あの日お兄ちゃんたちが作った“お兄ちゃんソング”。
(なまえ)
あなた
今日もいい日だった?
琉斗(りゅうちゃろ)
琉斗(りゅうちゃろ)
うん。音がいっぱいで、楽しかった。
あなたは微笑んで、静かに扉を閉めた。

琉斗のADHDは、“困りごと”じゃなく、“リズムの個性”だ。
彼の世界は、少し速くて、少し眩しくて、
そして何よりも――とても美しい音でできている。
🌿概要欄

“公認お兄ちゃん”たちは、
琉斗の「速い世界」を止めようとしない。
ただ隣で、そのリズムにハーモニーを添えるだけ。

それが、彼にとっての「安心」と「自由」。
そして、それを見つめる家族の物語は、
まるでひとつの長い音楽のように続いていく。

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