香坂君がバトンを受け取って走り出す
やっぱり陸上部は速い
少しずつ差は開くけど、香坂君だって遅いわけじゃない
私は一度深く息を吸い込んだ
そして
みんなの応援の中、私の声が彼に届くとは限らない
だけどそれでいい
ただ、全力で走る彼を応援したい
しかしその時、彼の横に誰かが現れる
サッカー部のユニフォーム
それを着ているのは………
陽を受けて輝く赤い髪
清川君だ
女子の黄色い歓声があちこちから聞こえる
圧倒的なスピードで追い抜かされた
清川君はそのままぐんぐん陸上部に近づいく
香坂君は悔しそうな表情をしている
ちょうど彼がテントの近くを通るので、私はもう一度声を張り上げた
自分の出せる最大音量で
一瞬、目が合った気がした
聞こえたのかな?
そうならいいな
そして彼のスピードが少し上がる
一方、その頃清川君は陸上部を追い越して一着でバトンを2年の先輩に渡していた
その数秒後に三着になった香坂君も先輩にバトンを渡す
私はその間ずっと応援を止めなかった
香坂君の出番が終わってふと隣を見ると、牛沢君が珍しいものでも見るように私を見ていた
そう言われると途端に恥ずかしくなる
すごい普通に喋ってるけど
内心死にそう
ときメモ!!!
お願いだから1日にこんなにときめかせないで!!!
キャパオーバーなるから!!!
やっぱりというか、さすがというか、陸上部が1位だった
2位はサッカー部
弓道部は途中軽音楽部に抜かされて4位になっていた
だけど、香坂君の顔は清々しい
第1回のリレーの他のレースも軒並み運動部が1位を取ったところで第2回のレースに移る
結果は軽音楽部が優勝だった
第1走者から第5走者までが全員で順番にギターを組み立て、アンカーが弾きながら走ってゴールと共に地面に叩きつけて壊すという破天荒な演出は優勝も納得だ
しかも、ギターは壊すためだけに手作りしたらしい
他にも体操部がバク転をしたり、バスケ部がどこからか持ってきたゴールにダンクを決めていたりと大盛り上がりだった
確かにこれはみんな楽しみにする……!
そして、最後の競技である赤白対抗男女混合リレーでも白熱したあとはみんなでフォークダンスだ
ときメモ名物、これは外せない
といっても、ダンスしたことないけど……
なんとかなるよね?
グラウンドへ出ると音楽が始まる
最初のペアは……
香坂君だ!
っし!
やばい、手握られてる
シンジャウ
あぁ、ペアを代わらないといけない
少し名残惜しく思いつつ手を離す
それでもまだ心臓はドキドキしている
次は……どうしよ
女子に囲まれた彼と目が合った
困っているみたい
………あそこに入っていく勇気はないわ
無言で目を逸らす
ちょっと申し訳ないけど、ざまーみろ
ここに出て来るってことは、少しは牛沢君の好感度も上がってるんだな
……手、意外としっかりしてて大きい
私の足を踏まないように必死に下を見てステップについてきてるのが彼の優しさを表している
身長が近いから、頑張ってる表情がよく見える
私も余裕ないしね
交わした言葉も少ないまま次のペアを探す
これで最後かな?
ラストは……
谷本先生だ
先生と踊るって……なんか緊張する
………上手くない?
毎年踊ってるもんな
慣れてるって感じがする
大人の余裕ってすごーぃ( ᐛ )
キャパオーバーで頭働かねぇわ
それって!!!
私と!!!
踊るチャンスってことですよね!!!???
もう疲れた……興奮しすぎて
そんなこんなで曲は終わり、閉会式を終えて家族と一緒に家へと帰った
いやぁ………
すごい体育祭だった
来年大丈夫かな……
いや、その前に文化祭とかあるじゃん
死ぬ😇












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!