キッチンに立つと、冷蔵庫の中は思ったより静かだった。
食材はあるけど、どれも中途半端。
🐰「……微妙なラインだね」
🐯「問題ない」
🐰「自信満々だなぁ」
🐯「俺がいる」
その一言で、全部解決する気がしてくるのが悔しい。
***
テヒョンは自然な動きで袖をまくり、
フライパンを取り出した。
ここが“自分の場所”だと分かってるみたいな手つき。
🐰「手伝う?」
🐯「じゃあ、それ洗って」
🐰「はいはい」
並んで作業すると、距離が近い。
腕が触れるたびに、少しだけ意識してしまう。
🐰「近くない?」
🐯「今さらだろ」
🐰「……今さらって」
🐯「嫌なら離れる」
一瞬だけ間が空く。
🐰「……嫌じゃない」
🐯「だろ」
静かな声で言われて、心臓が跳ねた。
***
鍋を火にかけながら、
テヒョンがふと口を開く。
🐯「こうしてるとさ」
🐰「うん?」
🐯「一緒に暮らしてる実感ある」
包丁を持つ手が、少し止まる。
🐰「もう十分実感してるけど?」
🐯「俺は最近、特に」
🐰「なにそれ」
🐯「当たり前になってきた感じ」
“当たり前”。
その言葉が、嫌じゃなかった。
🐰「当たり前って、飽きない?」
🐯「飽きる要素がない」
🐰「即答すぎ」
🐯「毎日違う顔見せるからな」
視線が合って、思わず笑う。
***
料理が出来上がって、
テーブルに並べる。
派手じゃないけど、ちゃんと温かい。
🐰「美味しそう」
🐯「一緒に食べる前提で作ってる」
🐰「それ毎回言うよね」
🐯「事実だ」
向かい合って座る。
自然に目が合う。
🐰「ねぇテテ」
🐯「ん?」
🐰「こういう日が続いたらいいね」
🐯「続く」
🐰「……また即答」
🐯「迷う理由がない」
胸の奥が、じんわりあたたかくなる。
***
食後、片付けを終えてソファに座ると、
テヒョンが何も言わずに肩に寄りかかってきた。
🐯「今日、いい日だったな」
🐰「うん。何もしてないけど」
🐯「だからいい」
テレビもつけないまま、
ただ同じ空間にいる。
🐯「こういう夜を積み重ねたい」
🐰「……うん」
短い返事でも、気持ちは十分だった。
——派手じゃない。
でも確かに、大切な一日。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。