映画は、雨のシーンから始まった。
夜の街。
傘をささずに立つあなた。
監督の声が響く。
「もっと感情を抑えて。泣かないで、飲み込んで」
あなたは頷く。
カメラが回る。
言葉にできない関係。
言えなかった四年。
役と自分が、重なる。
「カット!」
監督が満足げに頷く。
「いい。今の目、使える」
スタッフが拍手する。
あなたは小さく息を吐く。
“仕事として”評価される瞬間。
一方、翔太はスタジオにいた。
グループの新曲打ち合わせ。
方向性の話。
「今回は恋愛色、強めでいこう」
プロデューサーが言う。
一瞬、空気が止まる。
メンバーの一人が冗談めかして言う。
「既婚者がセンターだと説得力あるな」
笑いが起きる。
悪意はない。
でも、刺さる。
翔太は笑う。
軽く返す。
でも内側では、何かが揺れている。
夜。
帰宅時間がずれる日が増えた。
あなたは台本と向き合い、
翔太は振り入れ動画を繰り返す。
あなたが聞く。
短い返事。
それだけ。
沈黙。
本当は話したいことがある。
でも、疲れが先にくる。
数日後。
映画のオフショットが公開される。
濡れた髪、真剣な眼差し。
SNSは盛り上がる。
《女優として覚醒してる》 《あなたすごい》
称賛。
同時に。
《旦那より格上になりそう》
そんな言葉も混ざる。
翔太はそれを、偶然見る。
スマホを伏せる。
深夜。
あなたが帰宅すると、リビングの灯りがついている。
少しだけ硬い声。
あなたの胸がざわつく。
平坦。
翔太は少し間を置く。
でも目が合わない。
あなたは気づく。
これは怒りじゃない。
焦り。
あなたが言う。
翔太の指が止まる。
静かに。
言葉にしてしまう。
翔太は息を吐く。
沈黙。
長い。
やっと出た本音。
あなたの心臓が、ぎゅっと縮む。
初めて、弱さがはっきり出る。
炎よりも静かで、深い揺れ。
あなたはゆっくり近づく。
翔太が顔を上げる。
静かな真実。
でも、すぐには埋まらない。
光の当たり方は違う。
評価の種類も違う。
それでも、並ぶと決めた。
でも今は。
少しだけ、間に隙間がある。
夜。
同じベッドに横になる。
触れてはいる。
でも、考えていることは違う。
炎は越えた。
でも、これは別の試練。
愛しているからこそ、生まれる不安。
↑目黒担の人こちらどーぞ👍🏻💕私のもう一つの作品です。








![⛄💜17時のスイッチ[完結]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/EOkNL2MhxNOnLeVbLBmpGszqo363/cover/01KDMET6R8CVT70D1RTK9AKTAJ_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!