第27話

すれ違う光
186
2026/02/22 10:25 更新
映画は、雨のシーンから始まった。
 夜の街。
 傘をささずに立つあなた。
 監督の声が響く。
「もっと感情を抑えて。泣かないで、飲み込んで」
 あなたは頷く。
 カメラが回る。
 言葉にできない関係。
 言えなかった四年。
 役と自分が、重なる。
「カット!」
 監督が満足げに頷く。
「いい。今の目、使える」
 スタッフが拍手する。
 あなたは小さく息を吐く。
 “仕事として”評価される瞬間。
 一方、翔太はスタジオにいた。
 グループの新曲打ち合わせ。
 方向性の話。
「今回は恋愛色、強めでいこう」
 プロデューサーが言う。
 一瞬、空気が止まる。
 メンバーの一人が冗談めかして言う。
「既婚者がセンターだと説得力あるな」
 笑いが起きる。
 悪意はない。
 でも、刺さる。
 翔太は笑う。
渡辺
渡辺
リアルすぎるって怒られるぞ
軽く返す。
 でも内側では、何かが揺れている。
 夜。
 帰宅時間がずれる日が増えた。
 あなたは台本と向き合い、
 翔太は振り入れ動画を繰り返す。
(なまえ)
あなた
今日どうだった?
あなたが聞く。
渡辺
渡辺
普通
短い返事。
渡辺
渡辺
そっちは?
(なまえ)
あなた
順調
それだけ。
 沈黙。
 本当は話したいことがある。
 でも、疲れが先にくる。
 数日後。
 映画のオフショットが公開される。
 濡れた髪、真剣な眼差し。
 SNSは盛り上がる。
《女優として覚醒してる》 《あなたすごい》
 称賛。
 同時に。
《旦那より格上になりそう》
 そんな言葉も混ざる。
 翔太はそれを、偶然見る。
 スマホを伏せる。
 深夜。
 あなたが帰宅すると、リビングの灯りがついている。
(なまえ)
あなた
起きてたの?
渡辺
渡辺
うん
少しだけ硬い声。
渡辺
渡辺
写真、見たよ
あなたの胸がざわつく。
(なまえ)
あなた
どうだった?
渡辺
渡辺
いいんじゃない
平坦。
(なまえ)
あなた
……それだけ?
翔太は少し間を置く。
渡辺
渡辺
すごいよ。ほんとに
でも目が合わない。
 あなたは気づく。
 これは怒りじゃない。
 焦り。
(なまえ)
あなた
比べられてるの、見た
あなたが言う。
翔太の指が止まる。
渡辺
渡辺
別に気にしてない
(なまえ)
あなた
静かに。
(なまえ)
あなた
私たち、今ちょっとだけ離れてる
言葉にしてしまう。
翔太は息を吐く。
渡辺
渡辺
離れてない
(なまえ)
あなた
じゃあ、なんで目見ないの
沈黙。
長い。
渡辺
渡辺
……怖いだけ
やっと出た本音。
渡辺
渡辺
置いていかれるの
あなたの心臓が、ぎゅっと縮む。
(なまえ)
あなた
そんなことない
渡辺
渡辺
わからないだろ
初めて、弱さがはっきり出る。
 炎よりも静かで、深い揺れ。
 あなたはゆっくり近づく。
(なまえ)
あなた
私が走るのは、翔太がいるからだよ
翔太が顔を上げる。
(なまえ)
あなた
一人だったら、ここまでやらない
静かな真実。
 でも、すぐには埋まらない。
 光の当たり方は違う。
 評価の種類も違う。
 それでも、並ぶと決めた。
 でも今は。
 少しだけ、間に隙間がある。
 夜。
 同じベッドに横になる。
 触れてはいる。
 でも、考えていることは違う。
 炎は越えた。
 でも、これは別の試練。
 愛しているからこそ、生まれる不安。
↑目黒担の人こちらどーぞ👍🏻💕私のもう一つの作品です。

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