樹 side
裏社会で生きる俺たちに表の仕事など知らない。
欲しいものがあれば金だって立場だって身体だってなんでも売る。これが俺たちが生き抜く方法。
事務所の場所的に同業者は沢山いるが誰にも場所は知られていない。知ったら終わりだ、と噂されているらしい。
裏社会から逃れる方法など存在しない。表の仕事より短時間で大量のお金が入るからだ。タイパとコスパを考えればこちらの方がいいだろう。
だが恋人がいれば話は別だ。恋人を守るのが男の基本。
恋人がいるにも関わらずこの世界に片足だけでも入れるやつはただのバカだ。
……それは一人で、という意味で。
恋人同士、すなわち二人で足を突っ込めば怖い事など何ひとつとしてない。
だから俺は足を踏み入れた。愛する恋人と共に。
その恋人がやっと帰ってきた。
今日の慎太郎の依頼はコンカフェ嬢の痛客の始末らしい。
ストーカー野郎だとかなんとか……まぁもう居ないからなんだっていいんだけど。
そんなことを考えていながら慎太郎を見ていると吸い付かれるように目に止まったのは慎太郎の首だ。
明らかに俺がつけたやつじゃないものがついている。
こいつには申し訳ないという概念が無いそうだ。
依頼人からこういうことをされることは珍しくない。感性が狂ってる奴らが多いから普通にしてくる場合が多い。
来た、俺らとは真逆のラブラブカップル。
喧嘩している所をほぼ見たことがない。ジェシーもこーちもお互いにベタベタしていて羨ましい。
俺なんて恋人なのに慎太郎にベタベタするなって言われるし……
とか言いつつ結局上書きはしたいのでしてしまう。
よく良く考えれば上書きって最初した人と関節キスしてないか?
まぁそんなことはどうでもよくて。
誰かに抱きしめてもらうのはストレスが軽減すると言うがそれは本当だと身をもって実感した。
やはり恋人が一番の逃げ場だ。
それは北斗も同じ事を前に言っていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。