第91話

一瞬の悲嘆と、永遠の幸せを。② 羽宮一虎
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2025/11/05 12:59 更新











窓から夕日の明かりが差し込む。

そこでやっと、かなり長い時間一虎くんと話していたのだと気がついた。





一虎くんがどうして少年院に行ったのか気になったけれど、

彼が話そうとしないということは、

話したくないのだと思い、私から追求はしなかった。




羽宮 一虎
羽宮 一虎
……そっか、
羽宮 一虎
羽宮 一虎
あなたは、俺と境遇は似てるんだな






彼と話すうちに、彼は父親から暴力を受けており、

そのうち母親も彼に無関心になってしまったのだと知った。





羽宮 一虎
羽宮 一虎
俺さ……未だに誰かと関係を作るのが怖い。
羽宮 一虎
羽宮 一虎
人は簡単に裏切る。
だから俺は、ケジメをつけるって決めたんだ。
全て、終わらせるって。






虚ろで、光のない瞳で彼は呟いた。





そんな彼を見ていたら、彼の苦しみが痛いほど心に染みて

今私に話したことではない別の闇を抱えている気がして___。





あなた
……一虎くん、






彼の名前を囁き、距離を縮める。

そのまま、本能のままに、彼の身体をふんわりと抱きしめた。




羽宮 一虎
羽宮 一虎
えっ、あなた……?





突然私の身体に包まれ、困惑している一虎くん。





私はそのまま、彼の秘めた闇について問いかけた。




あなた
一虎くんさ、まだ何か心に秘めてない?





羽宮 一虎
羽宮 一虎
……?
羽宮 一虎
羽宮 一虎
秘めてるって、何を?





あなた
うーん、上手く言葉にはできないんだけどね






しらばっくれようとする彼から一度離れて、

彼の瞳を真っ直ぐに見つめて、もう一度言葉を紡ぐ。




あなた
……後戻りのできないことを しようとしていない?





羽宮 一虎
羽宮 一虎
……後戻りのできないこと?
例えば?





彼の付けている鈴のピアスが、彼が顔を傾けたことで

からんっ、と鳴った。




あなた
一虎くんを疑ってるとか、そういう訳じゃないの。
あなた
ただ、今お互いのコトを打ち明けたはずなのに
一虎くんは、まだ何か抱えてこんでる気がしたから。





窓から覗いていた夕日がちょうど傾き、

教室の中は段々と薄暗くなっていく。





影のせいで、一虎くんの表情ははっきりと見えない。




羽宮 一虎
羽宮 一虎
……俺は、話したいコトは あなたに話した。
羽宮 一虎
羽宮 一虎
だから、あなたの言う俺が抱えてるコトは
あなたには話したいコトじゃねぇってこと。






___一虎くんの言葉が途切れてすぐ、

ガラスの鳴き声が不穏に響き渡る。




羽宮 一虎
羽宮 一虎
……俺が、アイツを殺せば済む話だ






その言葉で、彼の周りを薄暗い闇が覆うように感じた。




あなた
え、は……?
あなた
殺す、って……ちょっと待って、
それ本気で言ってるの?





羽宮 一虎
羽宮 一虎
だから、あなたには関係ねぇんだって





あなた
関係ある、ないじゃないよ
あなた
本気で人殺しをするつもりなら、私は絶対に止める。
あなた
相手もそうだけど……何より、
一虎くん自身が罪を背負うことに___





羽宮 一虎
羽宮 一虎
だから、テメェには関係ねぇだろ!!





あなた
……っ!!






教室中に、机を乱雑に叩く音と

彼の殺伐とした声が響いた。





今日出会ってこの数十分間、彼は優しく落ち着いた声色で話していたのに

今となっては、私が怯んでしまうほど恐怖を与える声に変わっていた。




羽宮 一虎
羽宮 一虎
___もういい、もう俺のコトに関わろうとすんな
羽宮 一虎
羽宮 一虎
これは俺の問題だ。他人テメェには関係ねぇんだよ






乱雑に椅子を戻し、一虎くんは教室を去っていった。





ついさっきまで、彼が人殺しをするんじゃないかって

必死になって止めようとしていたはずなのに、

彼の威圧に耐えきれず、何も言い出すことなんてできなかった。





ましてや、この一瞬で築いた関係も、

光の速さのごとく、崩れてしまった。




あなた
……何が、正しかったんだろう






完全に暗闇と化した教室の中、こんな言葉が零れた。




あなた
“殺す” って言ったことを、軽くあしらえば良かった?
あなた
そうしていたら、ただの笑い話で済ませられて
一虎くんに嫌われずに済んだのかな……?






でも、本当に人殺しをするつもりなのだとしたら?





彼に嫌われても、彼が怖くても。

一虎くんを、止めなくちゃいけなかったんじゃないの……?




複雑に絡み合う感情が、一気に限界を超え

瞳から暖かいものが溢れ出てくる。




あなた
___もう、何が正しかったのかわからないよ……っ






折角、理解し合える人と出逢えたと思ったのに。





この一瞬で、彼に普通とは違う感情を抱いていたせいなのか

瞼から絶え間なく涙が滴る。





誰もいなくなり静まった教室の中で、

私は我を忘れて 感情に身を任せて思いっきり泣いた。



















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