窓から夕日の明かりが差し込む。
そこでやっと、かなり長い時間一虎くんと話していたのだと気がついた。
一虎くんがどうして少年院に行ったのか気になったけれど、
彼が話そうとしないということは、
話したくないのだと思い、私から追求はしなかった。
彼と話すうちに、彼は父親から暴力を受けており、
そのうち母親も彼に無関心になってしまったのだと知った。
虚ろで、光のない瞳で彼は呟いた。
そんな彼を見ていたら、彼の苦しみが痛いほど心に染みて
今私に話したことではない別の闇を抱えている気がして___。
彼の名前を囁き、距離を縮める。
そのまま、本能のままに、彼の身体をふんわりと抱きしめた。
突然私の身体に包まれ、困惑している一虎くん。
私はそのまま、彼の秘めた闇について問いかけた。
しらばっくれようとする彼から一度離れて、
彼の瞳を真っ直ぐに見つめて、もう一度言葉を紡ぐ。
彼の付けている鈴のピアスが、彼が顔を傾けたことで
からんっ、と鳴った。
窓から覗いていた夕日がちょうど傾き、
教室の中は段々と薄暗くなっていく。
影のせいで、一虎くんの表情ははっきりと見えない。
___一虎くんの言葉が途切れてすぐ、
ガラスの鳴き声が不穏に響き渡る。
その言葉で、彼の周りを薄暗い闇が覆うように感じた。
教室中に、机を乱雑に叩く音と
彼の殺伐とした声が響いた。
今日出会ってこの数十分間、彼は優しく落ち着いた声色で話していたのに
今となっては、私が怯んでしまうほど恐怖を与える声に変わっていた。
乱雑に椅子を戻し、一虎くんは教室を去っていった。
ついさっきまで、彼が人殺しをするんじゃないかって
必死になって止めようとしていたはずなのに、
彼の威圧に耐えきれず、何も言い出すことなんてできなかった。
ましてや、この一瞬で築いた関係も、
光の速さのごとく、崩れてしまった。
完全に暗闇と化した教室の中、こんな言葉が零れた。
でも、本当に人殺しをするつもりなのだとしたら?
彼に嫌われても、彼が怖くても。
一虎くんを、止めなくちゃいけなかったんじゃないの……?
複雑に絡み合う感情が、一気に限界を超え
瞳から暖かいものが溢れ出てくる。
折角、理解し合える人と出逢えたと思ったのに。
この一瞬で、彼に普通とは違う感情を抱いていたせいなのか
瞼から絶え間なく涙が滴る。
誰もいなくなり静まった教室の中で、
私は我を忘れて 感情に身を任せて思いっきり泣いた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!