窓から差す日の光で目が覚めた。
目を擦りながら体を起こして、窓の外を眺める。
あの日から、またいつもの生活に戻った。
王子として仕事をして、回復魔法の研究を行い、いつものように眠る。
大体そんな毎日である。
その毎日がずっと続いていくのだと、
そう、思っていた。
…あんなことになってしまうとは、思ってもいなかった。
朝の用意をして部屋から出る。
突然人が出てきたので、急いで笑顔を取り繕う。
笑顔を作るのはずっと昔からの癖だった。
無愛想な感じよりも、笑顔の方が色々と都合が良い。
そう言うことが分かっているから。
でも瀬戸は笑顔を作るのを止めてくる。
『んなことしてたらいつか壊れる』と、俺を心配してくれているらしい。
…気持ちは嬉しいんだけど、笑顔で居ないと居場所を無くしてしまうのは俺の方だから
また今日も、同じ笑顔の仮面を被って過ごした。
そんなことを考えながら、自室で回復魔法の研究を進める。
すると、窓からチュンチュンと小鳥の声が聞こえた。
よく見ると、その小鳥の足に手紙が結ばれている。
瀬戸はいつも小鳥を使って手紙を送って来るのだ。
この子の名前は確か…『リリィ』だったかな…。
リリィを両手でそっと抱え、机の上へそっと置く。
そして、器用に足の紙をゆっくり解いていく。
固く結ばれた紙をようやく解いた。
僕がそう言うと、リリィは小さな羽をパタパタと震わせながら空へ向かって飛んだ。
少しの間リリィを見送り、瀬戸からの手紙にそっと触れる。
回復薬と血の匂いが、ふわりと香った。
決して『良い匂い』とは言えないが、僕は少し頬が緩んだ。
ペリペリと封筒を剥がし、中の手紙を読んでいく。
『今◯◯にいる』だとか、『雨が多くて大変だ』だとか、何気ない日々の内容が綴られていた。
中には瀬戸のマヌケ話も書かれていて、クスクスと小さく笑った。
そして、手紙の最後の方はこんな事が書かれていた。
『またお前に会うために、俺は意地でも死なねえぞ。
だからお前も無理すんなよ。』
俺はクスクスと笑いながら、机の中から便箋を取り出す。
そして、彼への手紙の返事を書き始めた。
『こっちは今冬だよ』だとか、『魔法の研究がうまくいってる』だとか、どうでもいい事ばかり。
だけどあいつは、それで笑ってくれるから。
そして最後に、一言付け足しておく。
『また会いたいから、早く帰ってきてよ。
それまで俺も頑張るからさ。』
手紙を紙飛行機の形に折り、魔法で瀬戸の元へと飛ばした。
手紙は、遠く遠くへとまっすぐ飛んでいった。
やほです、主の天音です
投稿遅くなってすみません…🙇
最近忙しいのと、書く気が起きないのと…
理由はたくさんですが、頑張って書いていきたいと思います!
それでは、また。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!