耀さんは私のことを弟と言い、家族として扱った
国である私たちに勿論生みの親などいない、ましてや血の繋がった…いえ、血が繋がってる人は居ますね
それでも私と耀さんに血縁関係などない、家族というものが程遠い私にとって彼を兄と慕うことは不可能に近かった
「…耀さん」
いつか、何週間かに一度月を見ながら2人で駄弁っていた時、ふとそんな事を考えていた
私たちに家族、愛情を感じることは事実上不可能に近い、それ故耀さんの家族に対する感情が理解できなかった
「貴方には家族を愛する気持ちがわかるのですか」
_本当の家族など居ないと言うのに_
耀さんは此方を見ながら目玉が飛び出るのかって程目を見開いたあと、ふっと音が付きそうなほど自然にその目を細めた…笑っているつもりなのだろうか
私には感傷しているようにしか見えない
「…それはまた、痛いところつくあるね」
「…矢張り分からないのですか?」
小さい頃の自分はよくもずけずけとそんなことを聞いたと今は思う
「…そりゃあな、我だってお前と同じ国あるから、親なんて居やしないし、きっと血の繋がってた奴もくたばっちまったあるよ」
此方など見ていない何処か遠くを…きっと私の想像も出来ないほど遥か昔を見ているのだろう
「じゃあ何故、こんな…家族ごっこ紛いのことを?」
「…あの竹林は菊と出会った場所であり、我の生まれたところでもあるある」
「外交なんてなかったあるし、人間が見つけてくれる数十、数百だったかもしれねぇな、1人で居たある」
あぁ、さらに遠くを見つめてる、私を見て話しているはずなのに私を見ていない、まるで目が見えていないような…
「やっと人間と初めて出会って、家族というものを見たある、我には理解ができなくて、温かいはずなのに冷たかったある」
_国というものはこんなにも孤独なのだろう_
「何が愛か分かんねぇある、でもこんな真似事でも、我があの時感じた冷たさが菊や省、香や勇珠に芽生えなければそれでもよいと思ったあるよ…」
私がいつも見ていた彼はもうそこには居なかった、何処か孤独に埋もれた、心の埋まらない穴から何かが永遠と流れ出ている…そんな何かが足りない様に見えた
「…っ…菊?」
気づけば彼は私の腕の中に収まっていた、唐突な行動に戸惑いを隠せない耀さんに、言葉を悩ませながらも伝えたいことを口にする
「…貴方が全部一人で背負う必要は無いんです、今までありがとうございます」
この穴を私が埋めて差し上げることが出来たら良いと思ったんです












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!