「そういえば、旦那は想い人とかいるのか?」
いつもの様に酒場に飲みに来たガイアにそんな言葉を投げかけられた。
「居ないことはないが…君には関係の無い話だろう。」
表情を決して崩さないようにしてそう返す。
だって言えるわけがないのだから。想い人が目の前に居るなんて。
拒絶し、あまつさえ剣を向けてしまった人にそんなことを曰う資格なんてありはしない。
『ねえ、義兄さんに好きな人っているの?』
『えっとね、今はまだ好きな女の子はいないかな?
ガイアの事が1番好き!』
『えへへ、ありがとう!嬉しいな!
俺も義兄さんのことが大好きだよ!』
そういえば、こんな話をしたことがあっただろうか。
ふと在りし日の記憶を思い出す。
どうせこんな風に笑い合うことなんて一生ないのだ、幼少期の記憶に縋るくらいは許されるのだろうか?
酒場の外には、あの日のような青空が広がっている。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!