第3話

2【お。様】
229
2023/03/25 09:00
あなた

……♪

 私は携帯で時計を見る。11:01と表示された画面を見ながら彼が来るのを楽しみにしていた。
理由は今日がデートの日だからだ。
少しのんびり屋な彼はデート以外でも約束の時間からは5分ほど遅れてやってくる。
あなた

(楽しみだなぁ…)

そんな気持ちで私は彼を待っていた。すると
何々?彼氏と待ち合わせ?
後ろから覗き込まれるようにして声をかけられる。私より一回りほど大きく少し色褪せた金髪と襟足。目が合ってしまえば完全にそっち目的で声をかけてきたことが伺える。
私は焦りながらも無視しようと顔を背けた。
おーい!無視は良くないなぁ…
そう言って私の口元を乱暴に掴み無理やり自分の方に向かせてきた。私は手を払おうとするがびくともしない。周りの人も私たちに気づいていない。気づかない振りをする。
やっぱ君可愛いね!
男は私の頬を触ってくる。背筋がぞくっとし私は男に恐怖する。足ががたがたと震える。
あなた

は、離して……っ!

私の必死の抵抗ももちろん効かない。
彼氏か友達知らないけどさ、そんな奴おいといて俺と楽しいことしに行こうよ♪︎
お金は全部俺が払ってあげるからさぁ♪︎
そう言って男は私の口から手を離した。私は逃げようとしたが一瞬で手をがしっと握られる。男の力に敵うわけもなく無理矢理引っ張られ連れていかれるしかない。
あなた

(怖い…怖いよ…助けて)

あなた

(鬱くん…)

私が心の中でそう願うことしかできなくなった。
目から涙が零れおちそうになる。私が顔を見られまいと俯いていると急に男の動きが止まる。
あなた

前を見ると男の手首を力強く握り相手を睨み付けている彼がいた。
鬱先生
ごめんやけどこの子もう先約おるねん
鬱先生
帰ってくれるか?
そう言って彼はさらに男の手首を握る手に力を込める。
いっ!
男が私の手首を離すと同時に私は手を引く。鬱くんも私が引いたのを確認すると男から手を離し、私の前に立ってくれる。
何すんだよてめぇ!
鬱先生
こっちの台詞なんやけど
鬱先生
人の彼女に手出しといて何様のつもりやねん
鬱先生
出るとこ出てもええんやけど
感情のない声色で淡々と告げる彼。関西弁ということもあるのか男は少し後退りする。
鬱先生
気ぃ悪いねんはよ失せろ
チッ…!
罰が悪そうな顔をしてそそくさと男は去っていった。
鬱先生
大丈夫やった?!遅れてごめんな!!
先程まで敵意むき出しだった瞳はいつもの優しいものへと変わっていた。彼は顔をなかなかあげれない私に目線を合わせるように少ししゃがんで覗き込むようにする。
あなた

ううん…大丈夫、来てくれてありがとう!

そう言うと鬱くんは私の手をきゅっと握ってくれた。
その日は互いに手を離すことはなかった。
みんと【作者】
みんと【作者】
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