クソみたいな上層部に、クソみたいな社会。
それが掛け合わされたらどうなるだろうか?答えは、クソみたいな世界の完成だ。
今目の前で血飛沫をあげる恋人も、そんなクソに殺されたのだ。
目の前には五条さん。
大抵の場合、体の強い遙が僕より早く目覚めて、寝ている僕を呆れたような優しい顔で見下ろしているはずなのに、どこにも見当たらない。
そうだ。
遙と任務で廃墟に行って、想定より遥かに上の等級の呪霊と対峙して、呪力を消耗して動きの鈍くなった僕を庇いながら戦って、それで。
爆音が鳴り響く中、急に目の前が紅に染まって、何かが倒れ込んできて、それは、確かに、僕の、
頭をバットで殴られた様に猛烈に痛む。吐瀉物が込み上げてくる感覚がしたから、ベッドを汚さないように飲み込んだ。
コツコツという靴音と共に硝子さんが近づいてくる。質問というのは今の状態についてだろう。
確かに言われてみれば、次の瞬間に狗巻先輩あたりが血塗れでここに訪ねてきてもおかしくはない世界だ。シーツが汚れるなんてことを一々気にしていても仕方ないのかもしれない。
あまり何も、というのは先程のようなことを考えるなということだろうか。アイスを食べたいだとか、そういうことも考えないとなると最早廃人だ。普通の人間に出来る所業ではないし、多分死んだ方がマシだろう。
医者の言うことを聞かないと碌なことにならないと思うので、取り敢えず従っておく。
矢張り五条先生は明るい。
相当なメンタルの持ち主なんだろうなあ。