前の話
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「お会計お願いします〜」
はい、と伝票を渡すとなにこれ!!と驚いた顔をされた。
「こんな大金払えるわけないでしょ!?」
「ふざけないでよ!!」
伝票で頬を叩かれた。
奥から同僚がやってきてお客さんに説教をしようとするのを止めた。
「いつもこんな額じゃない!!いつもより1万も高いよ!?」
この人はこの店の常連で、しかもいつも僕指名だった。
今日も僕指名で、話を聞いて欲しいらしくいつもより1時間半程長居していた。
「それは……」
「……じゃあ、来ない」
僕は同僚に財布から取り出したボトル7本分の金を押し付け、お客様を店の外へと送っていく。
「ねえ、冗談なんでしょ??今日は何時上がりなの??ホテルで……」
「え??じゃあ今までのは何だったの……??好きだからあんなに良くしてくれてたんじゃないの??」
「ふざけんじゃないわよ!!」
僕は店に戻り裏に行く。
休憩室に入ると、同僚がスマホを見ていた。
その金を手に取り、休憩室にある金庫にしまった。
タイムカードを差し込み足早に階段を下る。
そこからは何も考えずとりあえずダッシュ。
小学生からリレーの選手だっただけあって足に自信があった。
店からは全力ダッシュで10分くらい。
とっとっとっ、と軽やかに家を走る音がした。
帰って早々ハグとキスの甘々な時間。
至福だ……これがあるから生きていける。
この子は推しであり、幼なじみであり、彼女の煌星。
同棲2年目で、煌星は現在高校3年生、地雷界隈で有名な子だ。
今日も学校から帰って疲れただろうに料理を作って待っててくれたみたいだ。
お腹の空く匂いと、煌星の俺が好きな柔軟剤の匂い……落ち着く。生きてるって感じる。
グルル、とお腹が鳴ったところで甘えたタイム終了。
煌星をお姫様抱っこして、リビングへ向かった。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!