笑顔ってすごい。
忘れられるんだ。
あんなに苦しい思いが全て嘘のように消えるんだ。
だから、私は笑う。
感じたくないから。
知りたくないから。
辛いのは嫌いだから。
笑う。
私は今も嘘の口角を上げて笑っている__。
嘘を言えば、思えば、楽になる。
昔から好きでしょう?
私が嘘をつくことなんて、慣れたものだ
私の得意分野じゃないか!
このときの私は相当、おかしくなっていたとおもう。
嘘に固めた私が生きるのが気持ちよくも悪くもあって、どうしようにもない。
寂しさが今の私を作り出す。
滝のように寂しさという栄養剤が私に与えられて、見る見るうちに綺麗な花が腐っていく。
………………………………
……………
……
私は家に帰るなり、化けの皮が剝がれ落ちる。
行き場のない感傷。
どこに向ければ、私の花はもとに戻るの。
どこにこの思いをぶつければ、隠れた太陽が見つかるの。
……気づけば、辺りは荒れていて。
綺麗好きの私にしては異常な部屋になっている。
この部屋が私の心の部屋ならば、見るに一致してるな…
なんて思って天井を見上げてる。
そして、汚い部屋の中心に私という花が萎れてく。
あとどれくらいで落ちるだろう。
椿の花のようにきれいなまま終わりを向かえてしまうのだろうか__。
感傷に浸っている私を引き戻したのは、インターフォンの音だった。
私は、荷物を頼んだか曖昧なまま玄関を開ける。
そこにいたのは、翠の職場にお邪魔したときに知り合った俳優だった。
私はなぜそんな嘘をつくのかわからなかった。
俳優は、私の断りなしに玄関に入ってくるなり、扉を閉め鍵をかけた。
困惑するしかない。
何が起こっているのかわからない。
私はひどいと思っていながら、最初に翠を疑った。
男は私の腕を掴もうと忍び寄る。
それに気づいて私は、この男から離れたくて逃げ場のないリビングへ走る。
ダメだ、足が思ように動かない。
私が、ベッドに押し倒されるのも必然だった。
私に込められる力は強くなる。
私が動こうと逃げようとするたびに痛くなる。
今まで純粋で、綺麗なままだったのは、あの人の優しさだったのかもしれない。
でもね、もうちょっと積極的になってもでもよかったんだよ
嫌じゃなかっただろう。
こんなに嫌悪感味わっていなかっただろう。
どうして、ここまでほっといたの。
どうして、四年間も傍にいたのに一度も私を汚さなかったの。
もっと早く、私を_____。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!